2015年3月31日火曜日

608.「マーケット感覚を身につけよう---「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法」ちきりん

著者は、「マーケット感覚とは、社会や人が動く根源的な仕組みを理解する能力」と定義付けています。
そして、「マーケティングとは、その仕組みを活かして、何らかの新しい目的を達成するための手法」とも定義付けています。
つまり、マーケット感覚はマーケティングを行う前段に位置する全体把握力といったところでしょうか。そのため、この感覚として、ANAの競合を探す例題があります。しかし、これは従来から行われていたことで、取り立てて新しいものではありません。

新しいなと思ったのは、「論理的な思考」の対立軸として「マーケット感覚」を置いたことです。「論理的な思考」を鍛えることが流行している風潮ですが、「論理的に正しいはず策」が現実社会でまったく通用しないという例も少なくないといいます。

難関資格のために多大な時間と学習費用を投入したのに、結果が得られなかったという例例が挙げられています。これは、資格制度の変更などで難関資格の合格者が急増したりする社会環境の変化に要因があります。この変化をマーケット感覚で捉えて行動すべきということです。

ノウハウや知識を覚えるのではなく、過去に経験のない場面に遭遇したときにも、自分で判断できる独自の基準や肌感覚を持つことが大事との主張は、非常に納得できるものであり、刺激になりました。


2015年3月30日月曜日

607.「コロボックル絵物語」有川 浩、 村上 勉

子どもの頃、コロボックルの歌を歌った記憶がありますが、その元は、本だったのですね。

50年以上前に6冊書かれています。佐藤さとるさんによって書かれたシリーズです。これを有川浩さんが引き継いで、新しい物語を創るそうです。

コロボックルは、元々北海道で暮らしていましたが、イタズラなアイヌ人につかまって意地悪をされてから、よその国に移り住み、人間から隠れるようになったそうです。

本作は、北海道に住む女の子と、もしかしたらコロボックルかもしれない小さな影との出会いの物語です。


2015年3月27日金曜日

606.「物語のおわり」湊 かなえ

8つの短篇集からなる作品です。

1編目の「空の彼方」を読み終えたとき、何だか素人っぽい文体で、終わり方も中途半端だなと感じました。著者はもうネタ切れになってしまったのかと思い、読むのを辞めようとしました。

とりあえず、2編目を読み始めて驚きました。1編目がその後の全短編に繋がる布石となったいたからです。

1編目の短編小説が、思い悩んでる人の立場によって、受け取り方や感じ方が変わる。そんなことは、確かにありますが、一人の人間である以上、それを体験することは難しいです。

それを北海道を舞台に手渡しされていく短編によって、様々な人たちの感じ方や、物事の見方の変化を体験させてくれる奥深い作品です。


2015年3月26日木曜日

605.「モンスター 尼崎連続殺人事件の真実」 一橋 文哉

尼崎殺人事件の話を聞いたとき、何故、一人のおばさんに家族が乗っ取られ、殺し合いをしたのか分かりませんでした。この本でそのやり口を知りました。

角田美代子は、普通のおばさんではなく、人の姿をした化け物です。子どもの頃から、脅しや恐喝の方法をずっと学んできました。高校生の頃には売春業を営み、金を稼いで裏社会とも繋がっていきます。

裏社会から学んだ洗脳の手法を使い、社会から阻害され失うものがない人間を呼び込み、殺人を躊躇しない機械に育て上げ、自らの手下にします。

そして、資産を持つ仮定に潜り込み、暴力、レイプ、恥辱により心を負って自分に服従させます。夫婦を離婚させ別の組み合わせで結婚させたり、子どもを自分の養子にしたりして、家族を分断し、いがみ合わせて自分の思うようにコントロールしていきます。

こんな人間と関わりを持ったら、逃げることが非常に困難であると感じました。


2015年3月25日水曜日

604.「探偵の探偵2」 松岡 圭祐

主人公の玲奈は、スェーデンのベストセラー小説「ミレニアム」の主人公リスベットに似ています。

痩身の美女でありながら、豊富なITの知識を駆使して、情報を入手し、相手を追い詰めていきます。玲奈が探偵会社に勤務し、リスベットがセキュリティ会社に勤務している点も似通っています。

郵便ポストの開け方、銀行口座の調べ方、スマホを使った追跡、開封したメールを未開封に戻す方法など、全く知らなかったことばかりでした。こういった裏ワザを知っている著者の知識の広さに毎回驚かされます。

本書のテーマも殺人事件ではなく、妹を死に追いやったストーカーに情報提供した探偵を探す「探偵の探偵」がベースにあり、本巻ではDVシェルターから拉致された女性たちの話がメインになります。

スリリングな展開に、先が気になり、最後まで一気に読みました。


2015年3月24日火曜日

603.「探偵の探偵」 松岡 圭祐

「探偵の探偵」という非常に独創的なタイトルに惹かれます。本書は書き下ろしで出版されており、出版社の著者への並々ならぬ信頼感が伺えます。そして、内容はその期待を決して裏切らないものです。

まだ、10代の紗崎玲奈は、高校時代に新体操で国体の上位に入賞した華奢な美少女です。そんな彼女が高校卒業後、探偵学校に入校します。その目的は、探偵の手口を全てマスターすることです。

彼女が高校2年生の時、彼女の2歳年下の妹がストーカーに付け狙われます。住居を移転し、行き先をくらましたにもかかわらず、拉致され、下半身を裸にされた状態で生きたまま焼却炉で焼かれて殺されます。

移転先はわからなかったはずなのに、何故、拉致されたのか。そこにはもぐりの探偵の存在がありました。現在、探偵の仕事で一番多いのは浮気調査ではなく、居住地確認であり、その中にははストーカーからの依頼も含まれるそうです。

悪徳探偵を狙う探偵という設定で、探偵業界の裏側も見せてくれる、スリリングでトリッキーな小説です。




2015年3月23日月曜日

602.「英文ビジネスレター&Eメールの正しい書き方」 松崎 久純

英文レターやemailの基本的な書き方、実例、文章の構成、有益なフレーズという順番で、バランスよく解説されています。

内容も実用的です。

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など、これまで何となく使っていた単語やフレーズの正しい表記方法が明確になりました。



2015年3月20日金曜日

601.「日本一の大投資家から教わった人生でもっとも大切なこと」本田晃一

元納税日本一の斎藤一人さんの教えと出稼げば大富豪の兄貴の文体を足して4で割ったような本です。どちらにもなれず、中途半端な立ち位置で中身が薄いです。

大投資家竹田さんの話が半分くらいで、著者自身の話も半分くらい。著者自身の体験はあまり参考になりません。

竹田さんが資産家になるまでの話は、殆ど書かれていないのでよくわかりませんでした。

物の見方や考え方が書かれていますが、殆ど資産家になった現在の考えなので、この考え方をしたからといって資産家になれるわけではありません。竹田さんは元々経営者でした。資産家として余裕があっての考え方なので、普通の会社員が鵜呑みにすると、ただの人のよい貧乏爺さんになってしまう可能性があります。


2015年3月19日木曜日

600.「ヤバイ中国」 渡邉 哲也

この著者も中国について、非常に深くかつ的確な分析をしているように感じました。

中国や韓国の政治や経済の状況を公式なデータから組み立ててわかりやすく解き明かしています。

習近平政権下の太子党、上海派閥、共青団の三つ巴の権力闘争がよく分かりました。

尖閣諸島や西沙諸島で挑発的行為を行うのも、習近平の指示ではなく、追い詰められた上海派閥の暴走という見方も説得力があります。

習近平政権になって打つ手が殆ど失敗に終わり、どんどん世界から孤立していく中国。やはり、2016年位に大きな政変がある可能性は高いと思いました。


2015年3月17日火曜日

599.「教団X」 中村 文則

570ページという長編小説。
アマゾンのカスタマーレビューも賛否両論なので、正直、読むかどうかを悩みました。
著者の過去の作品にはずれがなかったため、覚悟して読み始めました。

結果は、読んで正解でした。
宇宙、宗教、性、貧困、搾取、戦争などに関する、様々な思想が語られます。各人の独白が長いため、途中で読むことを諦める人も多いと思いました。

私は、こういったテーマが気になるので、興味深く読み進めました。登場人物の思想を小説にしては深く記述しているので、作者の労力は多大なものであり、それをやりきった能力は非常に高いです。

こういったテーマを考える機会が得られる、重厚な思想小説でした。


2015年3月16日月曜日

598.「2015年 中国の真実」 宮崎正弘、 石 平

新華社通信によれば、2014年5月下旬に北京で400万元で買ったマンションが6月には350万元に落ちたそうです。
人民日報によれば、中心都市の不動産価格はすでに下落を始め、さらに下がるそうです。

不動産価格は2013年に比べ4割下落し、販売件数も4割下がっています。香港のエコノミスト郎氏は、「ローンを組んだ人は99%破産する。」と予言しています。

シャドーバンキング総額は、社会科学院の調査で324兆円。これが不良債権化したらそれこそ破綻しかねない。

そんな経済状況のなか、習近平は次々と上海派閥(江沢民派)を粛清しています。習近平が経済権益確保に動いていると思っていましたが、共青団(胡錦濤派)が軍事局と政治局を制圧しており、胡錦濤が江沢民に虐げられた意趣返しを習近平にやらせているとの見方もあるようです。

バブルが崩壊すると、弾圧されている民族や奴隷のように使われている農民工が叛乱を起こします。それを交わすために一番手っ取り早い方法は、他国と戦争を起こすこと。中国の一番の仮想敵国は日本です。著者が主張するように憲法改正と防衛力強化がその抑止力になるように思えます。今や軍事力強化は、他国を侵略する目的ではなく(現在の日本が他国を侵略しても利益はない)、侵略されないように必要と思いました。


2015年3月13日金曜日

597.「中国食品工場のブラックホール」 福島 香織

マクドナルドの中国産チキンナゲットの衛生問題を端緒に中国食品工場の実態を明らかにしています。

このニュースを初めて知った時、日本マクドナルドの中国食品工場の選定方法に誤りがあったのではとも思いました。

しかし、この上海福喜食品は、米大手食肉加工のOSI集団の上海現地法人であり、OSI集団は、マクドナルドを始め、ケンタッキー、ピザハットなど世界50以上の国際飲食チェーンブランドのサプライヤーであることを知りました。

そうなると日本マクドナルドが独自にサプライヤーを選んだのではなく、上海福喜食品を選ぶことがグループとしての総意だったのでしょう。

中国に行けば、衛生管理が全く行われていない小工場が作る食品が一般的です。小さい食堂や屋台に行けば、病死した豚を下水の油で作った「地溝油」で調理した料理も出てくることでしょう。それを避けるためにマクドナルドに行っても、期限切れの肉から作ったハンバーガーが出てくるとは・・・

世界最悪の空気と併せて、中国へ仕事や旅行で行く気は失せました。


2015年3月12日木曜日

596.「日本を恐れ、妬み続ける中国」 黄 文雄

辛亥革命後の中国は、日本から軍政、知識、資金を導入していました。

たとえば、現在の人民共和国憲法の70%以上も和製英語です。そういった関係からスタートしていながら、江沢民政権後、中国は日本を批判し続けています。

著者によれば、日中問題の原因の殆どは、日本の超安定と中国の不安定に起因するとのことです。

日本は、天皇を中心として2675年続く「万世一系」の国であり、政治、経済、社会、文化が世界のどの国と較べても、超安定の状態にあります。

一方、中華人民共和国は、建国して66年の「易姓革命」の国であり、不安定な状態にあります。

その不安定さが超安定を妬ませ、安定化させるために日本を仮想敵国としているのでしょうか。





2015年3月11日水曜日

595.「論理的思考のレッスン」内井惣七

15のレッスンを通じて論理的思考をマスターできるように書かれています。

かなり平易に書かれていますが、それでも内容を理解するためには、一度読むのを止めて、考えることが必要でした。

理解しているつもりだった演繹法と帰納法や、三段論法を、実はよくわかっていなかったことに気付きました。

ただ、真理関数のところにくると、殆どついていけませんでした。日常生活で使っている信号機が真理関数で制御されていることを初めて知りました。

読みながら、仕事に使えると思える部分があり、私にはとても有益でした。

さらに類書を読んでみたいという気になりました。


2015年3月10日火曜日

594.「恨韓論 ~世界中から嫌われる韓国人の「小中華思想」の正体!」黄 文雄

個人的に付き合いのある韓国人は皆いい人です。
しかし、報道で見聞きする韓国人の日本に対する報道は感情を害するものが多い。
このギャップが理解できませんでした。

本書を読んでその理由が少し分かった気がします。

まず、韓国理解の前提は「事大主義」。強きを助け、弱きを挫く。
日本が強いか弱いかによって、韓国は親日になるか反日になるかを決めます。
戦争に負けて領土も占領されていた時期に竹島は占領されました。
1990年以降の景気後退で経済力が落ちているために、従軍慰安婦や戦時賠償でたかってきます。

そして、韓国は本音と建前が全く違う国です。昼は反日、夜は親日。公は反日、私は親日。韓国人は本質的には日本が好きなように思えます。しかし、それを認めたくないし、認めると攻撃される。だから、より過激に日本を非難します。

しかし、外務省のホームページの
「我が国と、自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する重要な隣国」という表記が、「我が国にとって最も重要な隣国」
と書き換えられると、
「韓国格下げ、拙劣で子どもじみた日本の対応」(朝鮮日報)と騒ぎ出します。嫌いな国なら気にしなければいいと思うのですが・・・

結局、反日は利益を得たり、精神的に優位に立つための手段であるので、相手にせず、粛々と日本の国力を増強することに専念すればいいと思いました。


2015年3月9日月曜日

593.「寄居虫女」 櫛木 理宇

「寄居虫」と書いて、「やどかり」と読むんですね。初めて知りました。

顔中白塗りの年齢不詳の女が他人の家に入り込み、いつしかその家の全てを乗っ取る。

潜り込んだ家で始めは家の掃除や食事の用意など家族の欲望を満たして信頼を得ていく。話を全て聞き出していくうちに眠れなくさせ、判断力を奪ってから暴力と褒美で洗脳していく。

話をどんどん聞き出して子どもの頃からの悩みや恨みを記録しそれに捺印させることで心理的に拘束する。

そして、家族間の猜疑心をあおり、お互いに監視させて支配体制を完成させる。

家族を他人が支配するなどあり得なさそうな話ですが、ここで示された手法は現実味があります。支配される土壌は家族自体にそもそも存在し、その隙をついて入り込んでいきます。

尼崎殺人事件など現実の事件もあるので、空恐ろしい話でした。


2015年3月6日金曜日

592.「カバチ流人生指南 弱者はゴネて、あがいて、生き残れ!」 田島 隆

マンガ「カバチタレ」原作者の半生記です。

マンガの存在は知っていましたが、読んだことはありませんでした。著者が海事代理士で行政書士ということは知っていたので、何となく大学を出て資格を取った人だと思っていました。

しかし、大違い。著者の半生は壮絶なものでした。著者が試験に合格した際の最終学歴は、中卒でした。幼い頃から家が貧しかったため、学校ではイジメられ、先生からは無視され、両親は離婚します。
高校も学費が払えず中退し、駆け落ち同然で結婚したものの、事件を犯して少年鑑別所に入り、出所後に離婚。
無職となり家賃や公共料金が払えず夜逃げし、ホームレス同然の生活を送ります。

ところが、解雇された会社に対して、未払い分の給与の支払い請求を内容証明で送ったところ、事件が解決したことから、法律の世界の魅力に取り付かれます。そこから一年発起し資格取得にのぞみ、23歳のときに海事代理士の試験に合格し、人生が開けていきます。

学歴、お金、職歴がなくても意欲があるところから道が開けていく、心強い体験記だと思いました。


2015年3月5日木曜日

591.「月光のスティグマ」中山七里,

書き出しから少しあざといですが読者の関心を引き、どんどん内容に引き込んでいきます。筆力があるので、先が気になり一気に読み進めました。

双子の美人姉妹と幼なじみの主人公が阪神・淡路大震災を経てたどる数奇な運命の物語です。中学生の頃の殺人と政治資金の疑惑の2つの謎が進行します。

ただ、本作は物語の内容に無理が多いと感じました。

小学生の頃に負った「スティグマ」もタイトルを付けるためだけのようであり、あまり本題と関係ありません。

アルジェリアの日本大使館の悲劇も何だかつじつまの合わないのように感じました。

最後の明かされた中学時代の事件も、双子の性格からは非常に不自然でした。


2015年3月4日水曜日

590.「黄金の拘束衣を着た首相―なぜ安倍政権は緊縮財政・構造改革を推進するのか」 三橋貴明

安倍政権が何故、公共投資等のデフレ政策を縮小し、グローバリズムを促進する3番目の矢に固執するのかがよくわかりました。

簡単に言えば、そうしないと、株価が上昇せず選挙に勝てなくなったからです。

しかし、株価が上昇しても、その要因である円安により輸入価格が上昇し、消費者物価を引き上げる一方、グローバリズムにより労働者の賃金があまり上昇しないため、実質賃金が下落していきます。

つまり、発展途上国の国民と、外国人投資家が富み、日本国民が貧困化していくということです。

東日本大震災復興事業、2019年のラクビーワールドカップと2020年の東京オリンピックに向けて、公共投資が拡大し、実質賃金が上昇することにわずかな期待をかけます。


2015年3月3日火曜日

589.「ひらいて」 綿矢 りさ

短歌のような短いリズムある句が続く独特の文体です。簡潔で無駄がなく言葉が選びぬかれているため、その表現の味読し、心に残ります。

主人公の愛は、同じクラスのたとえに恋をします。しかし、たとえには既に美雪という彼女がいます。愛は、二人の仲を引き裂こうとしますが、逆に自分が壊れてしまいます。

愛は、外交的と思っていた自分が、実は無意識に周囲に自分を偽っていたことに気付きます。そして・・・。

女子高生の心の襞や思考の変化がとても自然に描かれていきます。感情移入はしないものの、心情の機微を理解できました。

2015年3月2日月曜日

588.「流星ひとつ」 沢木 耕太郎

2013年8月に藤圭子さんが28歳で芸能界を引退する直前のインタビューです。会話だけで文章が進みます。

藤圭子さんの全盛期を知らないので、ヒット曲は「圭子の夢は夜ひらく」の一曲だけかと思っていました。
しかし、実際にはシングル34枚の総売上700万枚、LP35枚が110万枚、テープ100種類が150万本で、累計売上が170億円!という、娘の宇多田ヒカルに勝るとも劣らない大スターでした。

突然の引退の理由は、ネタバラにはなるの書けませんが、とても意外なものでした。この理由は当時ほとんど知られていなかったのではないでしょうか。このインタビューも著者の沢木さんが封印し2013年まで出版されていませんでした。

貧しさの中で、しかたなく芸人として育ったことでコンプレックスが染み付いてしまい、スターになった後でも拭えませんでした。このコンプレックスは、歌を歌っているときは無心になることができたのですが、引退の原因となった出来事から、無心で歌を歌えなくなりました。そして、歌いながら色々考えてしまうようになり、コンプレックスからも逃れられなくなります。

また、いつも何かに怯えていましたが、その原因は子どもの頃に受けた父親からのDVだそうです。母親はこの父と離婚するのですが、離婚後も藤圭子はお金を無心され、断ると何をされるかわからないので、家賃と小遣いとは言えない大金を払い続けました。

有名になったことでマスコミから有る事無い事を書かれ、大金を持ったことで様々に人にたかられ続け、それでも正直であろうとする藤圭子は傷つき、病んでいきます。そしてついには引退に至り、やっと平穏な日々を送れると思えたのです。

その後については、本書に書かれていませんが、亡くなり方からは平穏な日々を送れたようには思えませんでした。とても胸が痛くなる歌姫の告白でした。