2015年9月30日水曜日

730.「「昔はよかった」と言うけれど: 戦前のマナー・モラルから考える」 大倉幸宏

戦前(大東亜戦争前)の方が、日本人の道徳心が高かったとの意見をたまに聞きます。本書は、新聞や書籍に掲載された内容を基に、当時の日本人の道徳心の実情を明らかにしています。

結論から言えば、当時も今と変わらない、いや、今以上に道徳心が低い状況にありました。

電車には服が破れるほど殺到し、そこら中で痰を吐き、屍肉を食品に混ぜ、図書館の本や破り、内通で生まれた赤ちゃんは殺される。

最近、どこかの国で聞かれるような内容で、日本人が野蛮だと眉をひそめるような事が、100年前の日本でも日常的に行われていました。

「衣食足りて礼節を知る」と言いますが、国家の盛衰が民度に影響するのでしょう。戦後の復興で豊かになった日本人が道徳心を高めたのでしょう。そして、「昔はよかった」という声が出てくるのは、長いデフレにより日本人が貧しくなってきており、道徳心が徐々に低下しているのかもしれません。


2015年9月29日火曜日

729.「絶対儲かる「値上げ」のしくみ、教えます」 石原 明

20年以上に亘りデフレが続いていている日本において、商品(サービス)の値上げをすることを薦める本です。

利益が30円の100円商品について20円値下げすると利益は10円に減ってしまいます。30円の利益を得るためには、これまでの3倍売らなくてはならず、それに伴い人や広告を増やすことで、更なるデフレ・スパイラルに入ります。

逆に30円値上げして130円で売ると1個あたり60円の利益となり、売る個数を半分に減らしても利益はそれまでと変わりません。

そこで値上げの方法を教えますというのが本書の内容です。俄には信じられませんね。しかし、豊富な事例を読んでいるうちに、値上げはできないということが思い込みではないかと感じていきます。そして、具体的なやり方も示されているので、実際に試してみることもできます。

この本のやり方で、1回でも値上げできれば、書籍代が回収できてしまいます。非常にお得な本です。

お世辞ではなく、何度も読み返し、実践したいと思える本です。


2015年9月28日月曜日

728.「英語の害毒」 永井 忠孝

最近の日本政府、企業、学校、そして個人の英語偏重へ警鐘を鳴らす本です。

日本人は英語を学習することで世界中で活躍できる人材になれると信じているが、英米人が自分達の言語を話せる奴隷を育成していると見方もあります。

いくら英語を勉強しても第二外国語として英語を学んだ人は英語で議論をする場合にはストレスを感じます。一方で英語が母国語である人はストレス無く思考出来る分、余裕を持って広く深く議論することができます。その時点で日本人が英語で議論した場合、勝ち目が薄いです。

では、幼い頃から英語教育を行えば、欧米人と対等に議論ができるという意見もあります。しかし、そうした場合、英語の発音がよくなり日常会話は上手になるものの、英語で問題を深く考えるというところまで到達できません。さらに悪い事に、英語教育に時間を割いた分、日本語でも問題を深く考えるということができなくなり、どちらの言語でも深く思考できない人間になってしまうとのことです。

実際、シンガポールはバイリンガル教育のモデルと見做されていますが、民族語も英語もどちらの言語でも読み書き能力の最低水準に達していないことが報告されているそうです。

日本では、実際に仕事で英語を使う人は、全体の2~3%程度との調査結果があります。そうすると、英語で仕事をしたい人や欧米人に雇われたい人は英語の学習をし、全ての生徒に英語教育をする必要はないと思います。

鄧小平はフランスで働いていたものの、中国語の方言しか話せませんでした。それでも、国を変える仕事を成し遂げています。日本語でしっかりと物事を考えて、翻訳者を交えたとしても、堂々と欧米人と議論の中身で勝負できる人材を育てた方が有益ではないでしょうか。


2015年9月25日金曜日

725.「あなたはこうしてだまされる 詐欺・悪徳商法100の手口」多田文明

最近の詐欺の手口が100種類も紹介されています。
どれも巧妙な手口で、騙されてしまうのも無理は無いと思えます。

それぞれの手口についての予防法や、引っかかってしまった場合の対処法も書かれているのでとても実用的です。

こういった手口をまずは知っておくだけで、自分の身に降りかかった場合に、詐欺ではないかという警戒心がわきます。

家族全員に読ませたい本です。


2015年9月24日木曜日

724.「日本一「ふざけた」会社の - ギリギリセーフな仕事術」 シモダテツヤ

非常に振り切れた会社「バーグハンバーグバーグ」の仕事術です。

面白いアイデアを生み出そうとしても、旧来の発想からは簡単には逃れられないので、そこから大きくはずれるやり方のヒントになります。

日本の会社の殆どが、真面目な会社だから、そのアンチテーゼとしてこういう会社が面白く、存在価値があるのだと思います。

2010年設立でまだ5年しか経過していないため、いつつぶれるとも分かりません。だから、書かれている内容を真に受けると危ないです。

ただ、発想を生み出すためのヒント探しという観点で読むと、何か発見があるかもしれません。


2015年9月17日木曜日

723.「女王はかえらない」 降田 天

2014年度「このミステリーがすごい」大賞受賞作です。

針山小学校3年1組は、マキを頂点にカーストが敷かれていました。彼女の機嫌を損なうと、下の階層に落とされてしまいます。男子生徒も何も言えず、クラスの女王のような存在でした。

4年生になった時、東京からエリカが転校してきます。マキの下で虐げられていた不満分子がエリカの側につき、4年1組は2人の女王の派閥に分かれました。

そうして、主導権争いが始まり、お互いに醜い足の引っ張り合いとなり、争いが徐々に激しさを増していきます。

ある日、ささいな事件が起こりますがそれが勢力の均衡を崩してしまいます。その結果ついに悲劇が起こります。

全編にわたり、読者を引っ掛けるトリックが仕掛けられており、読んでいて錯覚が生じます。子供の心理や集団の動きなどがよく描かれています。

3部構成でそれぞれ以外な展開があり、それらが重なって謎解きとなっています。最後まで一気に読める作品でした。


2015年9月16日水曜日

722.「ISISイスラム国 残虐支配の真実」 大高 未貴

ISISだけに限定せず、イスラム教徒が多い国の現状をレポートしています。具体的には、ISIS、イスラエル・パレスチナ、アフガニスタン、パキスタン、イラン、サウジアラビア、イエメン、エジプトです。

共通している点は、男は収入のために戦闘に赴き、女の人権は奪われて強姦、多産や監禁され、子供は教育の場がなく臓器摘出されたり、奴隷、兵士、売春婦にされてしまうことです。

基本的には、これらの国の人々は斬首といった残虐行為に慣れているようです。開祖自身がジハードの名の下に敵を斬首したり、戦利品として女性たちを性奴隷にしていたからだそうです。ISISの残虐行為は、これら1400年前の行為と何ら変わらないようです。ただ、その行為がSNSによって全世界に放送されるようになったことにより、際立っています。

一番印象に残ったのは、イスラエルの25歳のウエイトレスが当然のように語った
「本当の平和が欲しければ、戦争の準備を怠るな。」
というイスラエルの諺です。
常に他国からの侵略に脅かされている国ならではの、実体験に基づく格言です。

難しい問題が分かりやすく書かれていて読みやすいです。ただし、民族や宗教が入り組んでいるので、徐々に混乱していきます。それほど、複雑な問題だといえます。


2015年9月15日火曜日

721.「絶唱」 湊 かなえ

阪神淡路大震災とトンガとの奇妙な縁をつづった4つの短編集です。

テレビ番組のアナザースカイで、著者が作家になる前にトンガで青年海外協力隊の国際ボランティアの活動に従事していたと紹介されていました。その話から4話目は著者自身の体験を素材にしているのではないかと思いました。

トンガで暮らす尚美さんを中心に、彼女とトンガで出会った4人の物語を描いています。4人は尚美さんに紹介してもらった実在の人物がいるそうです。みんな震災で心に傷を負い、その傷が癒えずに生きています。

そんな4人が、物の考え方や生き方が異なるトンガの人達や、偽りなき自然に触れることで再生のきっかけを掴んでいきます。

改めて震災が人々に残す傷の深さ、人間の真の酷薄さを感じるとともに、それらを覆い尽くすことができる温かさに触れた思いがしました。


2015年9月14日月曜日

720.「世界で活躍する人が大切にしている小さな心がけ」 石倉 洋子

自己変革を望む職業人にとって、様々な示唆に富んだ本です。

海外での会議に出席するときの心構えや、その練習方法などが大変具体的かる実用的に紹介されています。

変化のスピードが早く、過去の経験が全く役に立たないことが多くなってきている現代において、個人が出来る小さいけれども、大きな変化を起こすきっかけとなる習慣が記載されています。

どれもやってみようと思えば実行できるものばかりです。とても有用な本だと思いました。


2015年9月11日金曜日

719.「幽霊なんて怖くない BISビブリオバトル部」 山本 弘

BISビブリオバトル部シリーズの第二弾です。第二弾のテーマは「戦争」。

6人の発表者が持ち寄った本から、戦争の様々な側面を考えさせられました。

子供の目から見た戦争の愚かさ
兵士が人を殺すときの気持ち
特攻を受けた側の心理
兵士は殺した相手のために泣くのか
              戦争を取材することの意義
              戦場の英雄は理想の軍人か

本を読むことで自分が体験していないことについて、様々な考えに触れ、同意したり反発したりする。体験していないことの最たるものは、戦争ではなきでしょうか。なぜ自分は、著者の主張に共感できたのか、不快に感じたのか、それを考えることで自分を知ることにも繋がるように思いました。

本書を読んで、自分がこれまで思いもよらなかったことが書かれている本を知り、興味を持ちました。紹介されている本のいくつかを読んでみようと思いました。


2015年9月9日水曜日

718.「「社会のゴミ」と言われたボクだからわかる『人生を変えるコツ』 」 小川 泰史

成功体験談かと思い読み始めましたが、そうでもなく、最初の方は、何の本だかテーマがよく分かりませんでした。

途中で、「コーチングか個人に対するコンサルティングでは?」と思い始めました。しかし、最後まで読んでも著者の本業が何だかよく分からなかったというのが素直な本音です。

「社会のゴミ」という、ひどい呼ばれ方なので、学生時代に、こう言われ続けたのかと思いましたが、実際は、最初に入社した会社を退職する時に、同僚の一人から言われた言葉だそうです。インパクト狙いでタイトルに使用したようです。本当にこういう事を本人に言ったとしたら、言う方がどうかしていると思いますが・・・

著者は、その後立ち直り、感謝と奉仕の気持ちで三角形を作るという考えに至り、成功し始めます。

私には正直、この三角形の話がよく理解できませんでした。興味ある方は本書でお確かめください。


2015年9月8日火曜日

717.「果てしなき渇き (宝島社文庫)」深町 秋生

クリックでAmazonへ
元刑事の藤島は、別れた妻から、高校生の娘の加奈子が失踪したとの連絡を受けました。

娘の交友関係から行方を追ううちに、自分が全く知らなかった加奈子の別の素顔が浮かび上がります。

その行動は藤島には受け入れがたいものばかりでした。

一方、加奈子失踪の3年前に中学校で起こったいじめと暴行事件。残忍な行為に心が抉られるようです。そして、この出来事は加奈子の失踪とどう関係するのか。

連続する暴力と良心を切り裂く悪行。
なぜ、加奈子は、深い闇と絶望に囚われたのか。その答えは、強烈な衝撃を与えます。



2015年9月7日月曜日

716.「ソーシャルシフト 新しい顧客戦略の教科書」 斉藤 徹、 伊藤 友里

スーパーマーケットの惣菜部のアルバイトが撮った悪ふざけの写真がツイッターにアップされ炎上したという今日的な問題から話がスタートします。

業績が悪化していくスーパーをどうやって立て直すかを物語仕立てにしています。

中小企業がSNSを使って業績を上げていくマーケティングの本かと思い読み始めましたが、予想と異なっていました。SNSは顧客の声を集めることと、従業員のコミュニケーション活性化が主な利用方法でした。

一番効果を上げていたのは、店長が従業員の話を聞き、仕事を従業員に任せるということでした。そうすると、これは従来からあるマネジメント手法の話で、新しい顧客戦略とは言えないのでは?

「ソーシャルシフト」や「オープンリーダーシップ」という耳慣れない用語を持ちだしていますが、簡単に言えば、「情報共有」と「権限移譲」という、以前からあった概念の話でSNSは単なる味付けのように思えました。


2015年9月4日金曜日

715.「探偵の探偵Ⅲ 」 松岡 圭祐

テレビドラマの原作です。現在4巻まで出版されていますが、今回のドラマではこの3巻までで話が作られています。

書籍では、非常にえげつない仕打ちやショッキングな出来事が描かれていますが、テレビでは3冊をうまくつないで、そういった部分をカットしています。

書籍の玲奈は22歳、琴葉は19歳なので、ドラマ版よりかなり若いため、物語の悲壮さが一層際立っています。また、登場人物の心理が詳しく描写されているので、物語に一層の深みを与えています。

「死神」の正体が分かり、玲奈は死神を追跡します。しかし、死神は次々と巧妙な罠を仕掛け、逆に玲奈を窮地に追いやります。

そして、追い詰められた玲奈に仕掛けた死神の罠が精神と肉体を破壊して・・・
3巻もスリリングでスピード感に溢れていました。


2015年9月3日木曜日

714.「土漠の花」 月村 了衛

自衛隊の海外派遣に関する非常に今日的問題を小説にしています。

ソマリア国境付近で墜落したヘリコプターの救助活動をしていた陸上自衛隊第一空挺団。そこにソマリアの一氏族最後の後継者である女性が助けを求めて逃げ込みます。間髪入れず敵対する部族が銃撃を加え、3名の自衛隊員が死亡、残りの隊員が武装解除されてしまいます。

生き残った隊員は7名。娘を守って闘うのか、娘を引き渡して逃げるのか。「未だかつて戦ったことのない軍隊」である自衛隊がテロリストに対抗できる戦力を持っているのか。自衛隊の海外派遣において最も恐れていた状況に直面します。

自衛隊は軍隊か、隊員に人を殺せる覚悟があるのか、戦闘のない海外派遣は永続できるのかなど、現在抱えている問題を考えさせられるます。

息をつく間ものい展開で一気に結末まで引きこまれます。そして、最後は意外な事実が・・・。
理不尽な戦闘の中で、己の過去や主義に悩みながらも、忠実に責務を果たす隊員達の姿に胸が打たれました。




2015年9月2日水曜日

713.「奇跡の営業」 山本正明

ソニー生命のトップセールスの方が書いた営業の本です。

「奇跡」とは、ちょっと言い過ぎの内容です。

この方のセールスの秘訣は、モチベーション管理と紹介営業です。仕組み的なものはありません。

モチベーションを高く維持して工夫を重ねた結果、アンケートという手法に辿り着き、それで紹介をいただけるようになったという話です。

冷静に読むとそれだけの話しでした。

生命保険営業をやっている人には参考になるかもしれません。

諦めずに工夫し続ければ、成功パターンが見つかるという点では汎用性があります。


2015年9月1日火曜日

712.「どん底からでも人生は逆転できる。」 谷口 愛

クリックでAmazonへ
著者は、父親の会社倒産から、4000万円の借金を背負い、妹を進学させ、家族を養うために15歳でホステスになったそうです。

20歳で借金を返済し、そこから高校の勉強を始めて30歳で神戸の大学に進学しました。

意欲さえあれば何歳でも学習できる。そして、学習し続けていれば、いつかはチャンスに出会い、その時、不遇の時代に蓄積していた智慧と人脈が成功に導く鍵となると思いました。

お金の一番有効な投資先は、人間の頭脳ではないかと思いました