2016年3月31日木曜日

895.「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする」 グレッグ・マキューン

本書が一番訴えていることは「より少なく、しかしより良く」。

それを成し遂げるためには、「本当に重要なのは何か?」を自分に問いかけ、重要でないことをすべて捨てることです。

簡単そうでいて、なかなか難しいです。それをできるようになるために、様々な物の見方や行動指針が提案されます。

例えば、クローゼットの整理方法。
「いつか着る機会があるだろうか?」と考える代わりに、
「大好きか?」「すごく似合うか?」「しょっちゅう着るか?」などと自問します。
こういった視点の転換で、かなり行動が変えられるのではないでしょうか。

ものの見方や、行動の選択方法など、自分の仕事や生活をシンプルかつ効果的に変えるヒントが沢山紹介されていて、勉強になります。

2016年3月30日水曜日

894.「ここは退屈迎えに来て」 山内 マリコ

寂れていく地方都市での若者たちの物語。

高校を卒業し、皆、生まれ育った地方都市を離れて散り散りになります。数年達、都会の生活に馴染めず、生まれ育った町に帰ってくると、そこは自分が高校時代を過ごした町より数段うらぶれた、面白みのない町となっていました。

町に残った男は早々に結婚し、女は子供を産んで、すっかり老けこんでいます。しかし、出戻りにとっては、付き合う相手もなく、親に寄生し惰性で生きていく日々。

学生の頃、クラスには、椎名といる人気者の男の子がいました。スポーツ万能で話も面白く、いつも皆の中心でした。そんな椎名と、椎名に憧れ、思いを寄せていた同級生たちとの邂逅。

あの頃輝いていた椎名と、輝きを失った椎名を思うことで、自分自身の過去、現在を振り返り理解していきます。

そして、学生時代の人気など卒業してしまえば色あせてしまい、そこから学生時代よりも長い、自立力が求められる人生が続いていく。そのことに気づいたときに本当の自分の人生が始まるような気がしました。

2016年3月29日火曜日

893.「競争しない競争戦略 ―消耗戦から脱する3つの選択」 山田 英夫

競争しない競争戦略は、大きく分けて「棲み分け」と「共生」に分かれます。

「棲み分け」には、ニッチ戦略と、不協和戦略があり、
「共生」は、協調戦略となります。

さらに、ニッチ戦略には10類型、不協和戦略には4類型、協調戦略には4類型あります。

つまり、本書の「競争しない競争戦略」には、合計18類型あることになります。もうこの時点で、これらの戦略は、数が多すぎて実用的ではないという感じがします。

このそれぞれの戦略に、今、日本で成功している起業を当てはめているので、頭の整理ができて分かりやすいです。

ただ、18もの戦略は数が多すぎるので、細分化されすぎており、分類として適切かどうか、分かりません。

また、この当てはめも、成功した結果を帰納法で分類したので、演繹法によって戦略を実践して、成功を再現することは難しいと感じました。

例えば、星野リゾートの成功事例が紹介されていましたが、本書では星野社長がコーネル大学で学んだ手法で成功したように読めます。しかし、実際には、その手法は成功せず社員にそっぽを向かれ、そこから自分の頭で考えた方法を色々と試して、成功に至ったのでした。

つまり、こういった戦略にそってやったからといって成功が約束されているわけではないと思います。試行錯誤して、なんとかうまくいった過程を後付けで理由づけしたものが戦略であり、たまたまその環境だから成功したのであり、再現性はないと思います。だから本書でも、戦略が18にもなってしまったのではないでしょうか。

多くの企業がよく調べられ分析されているので、様々なビジネスモデルを知るという点では、優れた本だと思いました。

2016年3月28日月曜日

892.「孤虫症」 真梨 幸子

私生児だった母と、その母から生まれた私生児の2人の娘。

男好きする女の血を受け継ぐ2人の娘を中心に展開するミステリー。あけすけな性描写と狂気的な心理描写に不快感が高まっていきます。

しかし、読み始めると止めることができません。

そして、1章が姉の視点から、2章は妹の視点から話が展開しますが、3章においてそれがトリックだったことが分かってきます。

さらに、前提が次々覆され、新たな事実が次々明かされながらも、話は意外な方向に収束していきます。

人間の不快感を刺激する、見事なミステリー小説です。

2016年3月25日金曜日

891.「戦略的インテリジェンス入門」 上田 篤盛

元防衛省情報分析官による情報分析官向けの教科書のような本です。

基本的な項目はあらかた押さえられています。説明が平易で分かりやすく、最近の外交情勢、特に中国との関係について例示されており、非常に興味深いです。

ただし、この分析法の有効性には確信が持てませんでした。それは、分析に用いられている情報は、問題発生から暫くたって分かった後付情報であり、情報が少ないなかでもこうした分析ができたか分からないからです。

また、これらの分析が、問題発生時に民主党政権で検討されたような形跡がないことです。著者自身は当時政権とは無関係であったかもしれませんが、こういったインテリジェンス分析の手法は政権周辺にもあってしかるべきはず。

しかし、体当たりした船の船長を解放し、ビデオは公開しないと約束してしまい、公開した人間を組織に居たたまれない状況に追いやってしまった。

こういったことから、せっかくの戦略的インテリジェンスは活用されず、机上の空論になっているのではないかと懸念が生じました。

2016年3月24日木曜日

890.「生産性を高めるために私がしていること、考えていること」 三橋 貴明

著者が生産性を高めるためにしていることの1つは、「毎日ブログを書く」ことだそうです。

そして、「毎日ブログを書く」秘訣は、「毎日ブログを書く」ことを継続すること。

継続することで、ノウハウや技術、技能がどんどん蓄積されて、自然に生産性が上がるそうです。

この「継続する」ことが1つの鍵で、何かの分野で能力を身に着けたいとか、ある分野で優れた人材になりたいと思ったら、ひたすらやりつづけることだそうです。例えば、作家とか評論家になりたい人は、3年間毎日ブログを書いてみることです。

そうしたことから、非正規雇用などの雇用の流動化が継続することによる生産性向上を阻んでしまうと苦慮します。

日本経済への提言として、これから来る「超人手不足」問題を解消するために、設備投資、人材投資、公共投資、技術開発投資を増やし、モノやサービスを生産する力を取り戻すことで、「デフレ脱却」を実現するということです。

実現可能で蓋然性が高い提言だと思います。

2016年3月23日水曜日

889.「父一代の日亜化学―青色発光ダイオード開発者中村修二を追い出したのは誰だ」 小川 雅照

本書を読むまでは、青色LEDを巡る訴訟は、日亜化学の二代目社長と中村教授との特許権の帰属に関する争いと思っていました。

しかし、背景には日亜化学の跡継ぎ問題があったようです。つまりは、日本経済界を巻き込んだ壮大なるお家騒動です。

寂しがりやの創業者の妻が被害妄想をふくらませ、長女と結託して全ての財産収奪を図ります。その過程で全く部外者の老婆が長女に取り入り、洗脳して財産を散財し始めます。

病気で全盲になった創業者を監禁して、個人財産や会社の経営権を掌握し、長男や次男を会社から排除したという見立てです。

そして、創業者が見出し、可愛がった中村教授をイジメ抜いて追い出し、金の卵を生む特許権を会社で独占しようとしたという筋立てです。

この話がどこまで本当かは分かりませんが、確かに不審な事柄が多いです。

経営者が健康なうちに後継者を定め、株式なども分割し、体制を固めるべきであったと簡単には言えますが、そうは出来なかったことから、難しいことなのでしょう。

2016年3月22日火曜日

888.「部屋 下・アウトサイド」 エマ・ドナヒュー、 土屋 京子

19歳から7年間監禁され子供を生まされた女性とその息子の物語。

後編は、監禁部屋から脱出して、外の世界で生活し始めた数ヶ月間を描きます。

階段を昇り降りできないとかいった狭い部屋で生まれてから5年間育てられた子供に起こり得るだろう、普通の子供との違いがよく描かれています。

しかし、ジャックが5歳にしては頭が良すぎます。知的レベルが高い母とずっと二人きりで生活していたため、小学校3年生位のレベルにあるとの解説ですが、それにしても、物事をよく考えています。考えないと小説にならないという側面もありますが・・・

異常な環境で生まれ育った子供の生態を実感することができます。

2016年3月21日月曜日

887.「怪盗探偵山猫 鼠たちの宴」 神永 学

2016年1月スタートのドラマの原作です。シリーズの第3弾。

ドラマは、主役の亀梨和也さんありきなので、原作の山猫のキャラクターとかなり異なります。

1作目と2作目が長編なのに対し、本書は、山猫を中心にした4つの短編になります。シリーズの中でも、エピソード的な位置づけです。

そのため、気晴らし的に気軽に読めます。

2016年3月18日金曜日

886.「絶望は神さまからの贈りもの」 ひすい こたろう、 柴田 エリー


とにかく読みやすく、読むと元気がでます。

ジョン・レノンや孫正義といった偉人たちも最初から上手くいっていたわけではありませんでした。それどころか失敗の連続です。

だけど挫けずに失敗に抗っていくうちに、基礎体力がついて行きました。そして、基礎体力が失敗を超えた時、大抵の失敗を解決できる力がついていました。

そうなると、失敗は乗り越えられると分かっているので、どんどん成功を積み重ねていけます。最初に失敗しているから、驕りにも用心深くなれます。

正に、絶望は神様からの贈り物と思えました

2016年3月17日木曜日

885.「カッコウの卵は誰のもの」 東野 圭吾


2016年3月27日からWOWWOWで放送されるドラマの原作本です。

アルペンの元日本代表の緋田は、娘の風美と二人暮らし。風美もアルペンのオリンピック代表候補です。母は、風美が2歳の時に自殺しましたが、その理由は不明です。

緋田は、ある日、妻の遺品から風美が実の娘ではないのではないかとの疑念を抱きます。そんな時、風美が所属するスキークラブの柚木から、緋田と風美のDNAを分析させて欲しいとの依頼を受け、緋田が取った行動は・・・

文章が読みやすく、読者の興味のそそり方がうまいので、どんどんページが進みます。事件の謎も簡単に予想がつくものではありません。ただ、かなり心を動かされたりするようなことはありませんでした。

最後の方で明かされる「カッコウの卵」の意味は、2つあるように思い、なかなか考えさせられました。

2016年3月16日水曜日

884.「SEALDsと東アジア若者デモってなんだ!」 福島香織


SEALDsについては、読者を捉えるためのトピックスに過ぎず、序章を割いただけです。

メインは、台湾のひまわり革命と、香港の雨傘革命です。出版社がこれらに興味を持たなかったものの、SEALDsについては関心をもったため、急遽SEALDsについて短期間で書いて、それを追加して出版したようです。

SEALDsについては取材も乏しく、他者の著書と伝聞でまとめたため、内容が弱いです。

ただし、SEALDsに対する「共産党が糸を引いている」、「知的レベルが低い」、「売国目的である」といった誤解は、少し解けました。

タイトルにSEALDsを持ってきたのは、詐欺とまでは言いませんが、編集者のあざとさが感じられてしまいました。

2016年3月15日火曜日

883.「頭が真っ白になりそうな時、さらりと切り返す話し方」 赤羽 雄二


日常生活で突然質問された時というより、会議やセミナーでの質問対応向けに書かれているような感じがしました。

勿論、日常生活でも使える方法です。

やり方は、情報収集、問題把握、解決力強化などで普段から準備しておき、「発言予定メモ」をつくってその会議向けに準備をし、「予行演習」によって練習しておくことです。

既にやっている人もいる、ごく普通のことですが、やはりこれが一番効果があるようです。

日常生活にあまり向かないように感じたのは、会議と違いテーマが定まっていないので、質問に対する対応を数多く考えておく必要があるからです。

実践的な内容で、すぐ実行できる、効果的な方法と思いました。

2016年3月14日月曜日

882.「さよなら、ニルヴァーナ」 窪美澄



著者の文章は、やっぱり、上手いなと思いました。人物や風景の描写が素晴らしいです。そして、露骨な性描写が読者の不快な感情を刺激します。人間の日常の嫌なところを掘り下げて描写します。
本書のテーマは、少年Aの事件。タブーとなった事件を題材に、最も不謹慎とも言える、犯人への憧憬を描きます。

少年A、被害者の母、少年Aに憧れる少女を軸にそれぞれの生い立ちから書き起こし、それぞれが何故、そういった行動を取ったのか、明かされていきます。特に、被害者の苦しみを読むと、胸が痛みます。

その一方で、少年Aを題材とした小説を書くという、もう一つの話が進行します。作家としてのあり方、資料集めなどに、著者自身の実態が描かれているように思え、ある種、私小説的でもあります。

「一人称で物を書くのなら、本当にその人が書いたように、読みてに実感させなければ意味がないよ。」
本作は、正にそれを体現しているようです。

「小説を書きたいというのなら、あなたも人の中身が見たい人間なんでしょうね。」
猟奇殺人者と小説家を同じ種類の人間と捉えた見方が興味深いです。両者はともに、「表現者」であり、それが猟奇殺人に向かったのか、芸術に向かったのかの違いに過ぎないということでしょうか。

普通の人間の倒錯を覗き見るようなこれまでの著者の作品とは、同じ臭いがするものの、人間の深淵を追求しようとする本作は、一線を画した作品となっています。

著者のステージが一段上がった、傑作と思いました。

2016年3月13日日曜日

881.「かわいい結婚」 山内 マリコ


20代の田舎で育った女性の生態がよく描かれた3つの短編集です。

一作目は、今時の女の子の結婚事情がリアルです。かろうじて正社員となれた夫と、家事を母親に任せっきりで育った妻の家事事情。主婦が一生やり続ける「家事」って何を問いかけます。

二作目は、カフカの「変身」の女性版。ある日起きると女になっていた27歳男性の悲喜劇。女になることで、女性特有の辛さ、弱さ、楽しさを知り、これまでの自分の女性との関わり方に気づく話。

三作目は、そっくりな2人の女性が卒業後、一人は地元に残り、一人は東京へ。それぞれがそれぞれの環境で一人は結婚に、一人は仕事に思い悩みます。結局、どちらの道を選んでも、思い悩んでしまうという、切実な状況が面白いです。


2016年3月12日土曜日

880.「日本人が知らない世界の「お金」の流れ」 渡邉 哲也

一番興味があったのは、在日朝鮮人、在日韓国人の在日特権が無くなるとの話です。

そもそも、日本は1910年に韓国を併合し、1951にサンフランシスコ講和条約を締結したために、「かつて日本人だった朝鮮人」が生まれました。

そして、朝鮮戦争により、「かつて日本人だった朝鮮人」の一部が、「韓国籍に移行した韓国人」となります。残った「かつて日本人だった朝鮮人」は、日本政府が韓国しか国家として認めていないため、政治難民となりました。

そのため、「かつて日本人だった朝鮮人」を日本が面倒をみることとなり、在日朝鮮人として日本国民と同じ扱いがされます。つまり、生活保護等の在日特権を受けれられるようになったのです。

ところが、本来、韓国が面倒を見るべき韓国籍の在日韓国人ですが、「韓国籍にも同じ扱いを認めないのは差別だ」と言い始め、在日韓国人にも生活保護等の在日特権が認められるようになったのです。

それが、2012年7月9日の「住民基本台帳の一部を改正する法律」により、適法に3月を越えて日本国内に滞在する外国人に住民票が発行され、それとともに「在留カード」が発行されます。これにはすべて本名記載で、通名が廃止されることになります。つまり、通名を使っていた外国人が犯罪を犯した場合、日本名で公表されるのではなく、本名で公表されることになるはずです。

そして、2015年7月9日までにこれまでの外国人登録証が「在留カード」か、「特別永住者証明書」に切り替わったことで、在日朝鮮人、在日韓国人の身分が明確になり、税務上の追跡が確実にできる仕組みになるそうです。

一つの戦後レジームが終わり、一部の人達への特権が解消される動きは、日本人にとって喜ばしいことと感じました。


2016年3月11日金曜日

879.「IoTまるわかり]」三菱総合研究所




最近耳にするIoT。よく分からないので本書を読んでみました。

簡単に言うと、「モノがインターネットでつながること」らしいです。現在のインターネットの主流は、人間同士のつながりに限定されていますが、これが「モノ同士がつながってやりとりする」ようになるそうです。

本書の感想は、集めてきた企業の情報(宣伝)をまとめただけの感があり、テーマがあまり深掘りできていないようでした。その分析もポーターのモデルであたかも分析しているように見せていますが、いまだにポーターのモデルを使う総合研究所は、大丈夫なのかと思いました。

IoTってこんなこともあり、あんなこともできるんだという感想を持てますが、結局何だろうという感じです。

IoTという言葉がいつまで使われるのか、疑問です。また、ここで描かれた世界になったとき、人間は自分で調べたり、選択肢を考えたりする能力が退化するのではないかと思いました。

2016年3月10日木曜日

878.「権力闘争がわかれば中国がわかる ―反日も反腐敗も権力者の策謀」 福島 香織

書かれていることのすべてが、政府がするようなことではありません。「党」とは名乗っていますが、選挙も行われていない以上、政党とは言えません。単なる独裁政権です。

権力、女、金の奪い合いに明け暮れ、人民のためになるようなことは行われません。人民のためと言うときは、たまたま自分の利害と一致したときだけでしょう。

ここに描かれた4つのシナリオは面白いです。
1. 習近平政権は2017年の全人代で政権交代となる
2. 習近平は暗殺又は政変で失脚する
3. 習近平は中国のゴルバチョフとなり中国が民主化される
4. 習近平は中国のプーチンとなり実質的な独裁者となる

中国で起きている様々な現象は、ほとんどが権力闘争と結びつくという、著者の主張は非常に分かりやすい見方でした。

2016年3月9日水曜日

877.「家なんて200%買ってはいけない!」 上念 司

なかなか面白く読めました。著者自身もかつて一戸建てを買い、3年半で1,200万円を損した経験を持つそうです。

今後の人口減少から、一人一戸以上の住宅を相続するという将来像を描き、住宅価格が上昇することはないと予測しています。さらに金利が上昇すれば賃貸で住んだほうが、支払金額が少なくて済むとのシミュレーションを行っています。ライフステージに合わせて住み替えをした方が、快適に生活できるというわけです。

確かに説得力があると思いました。かつて不動産は値下がりすることはないとの不動産神話がありましが、全くの嘘でした。マンションの高層化などから、一時的にある地域の不動産価格が上昇することがあっても、大方の不動産が値上がりすることはほとんど無いと感じました。

あとは、不動産が賃貸用投資物件として有望かという疑問は残ります。世に不動産収入で稼いでいる人の話をよく聞きますが、不動産余りという状況では、高収益を保持し続けることも、楽ではないだろうと思いました。

2016年3月8日火曜日

876.「深く深く、砂に埋めて」 真梨 幸子

有利子は生まれながらにして男を魅了する。

金銭感覚が全く無く、欲しい物は我慢できない。お金を得るために体を売ることに全く抵抗がない。そうして、人気女優の地位を手にするが、スキャンダルにより芸能界から追われてしまう。

損害保険会社のエリート社員、斉藤はパーティーで有利子に出会い、一目惚れする。そうして、付き合うようになるが、有利子に貢ぐために、蓄えをあっという間に失ってしまう。お金が無くなった斉藤に対して、有利子は興味を失っていく。

そんな有利子をつなぎとめるために、斉藤は徐々に足を踏み外していき・・・

有利子のミステリアスさや、事件の不可解さをつくるために、篠田という第三者の目から見た事件を描いています。ただ、有利子についてもう少し深掘りが欲しかったです。何度も左まぶたの傷あとに触れられていますが、それが何を象徴しているのか、5歳まで修道院で育ったのに、なぜ当時からお金ある人に魅せられていったのか、など有利子の内面について知りたかったです。

2016年3月7日月曜日

875.「アズミ・ハルコは行方不明」 山内 マリコ

舞台は名もなき地方都市。工場は撤退し、商店街はシャッター通りとなり、大きな施設といえば、イオン位。町中の交通手段といえば車か自転車。都会に出るとなるとどうやら名古屋らしい。

そこで生活する、愛菜、ユキオ、学は高校の同級生。皆、正社員の仕事を得ておらず、自宅に住んでバイトなど小遣いを稼ぐ。将来に夢はなく、その日その日を刹那的に生きている。

学はユキオから見せられたDVDに強い刺激を受け、2人でストリートアートを始める。グラフィティのテーマとして選んだのは、3ヶ月前に失踪した「安曇晴子」の似顔絵。

このグラフィティが評判となり、事態は意外な展開に・・・

デフレ化で停滞している地方都市に暮らす、若者の生態や倦怠感がよく描かれています。特に、学歴や職歴もない女性が地方都市でどうやって生きていくのか。学生時代は可愛らしさでうまく渡ってきた人生を、年を経たことで可愛らしさを失った後にどう渡って行くのか、考えさせる作品です。

2016年3月6日日曜日

874.「99%の社長が知らない銀行とお金の話」 小山 昇

銀行との付き合い方が非常によく分かる本です。

無借金経営が尊ばれる考え方もありますが、著者は銀行からお金を借りるべきと主張します。その理由は、経営は規模の拡大が重要であるため、金利は高くてもいいから長く、たくさん借りるとのことです。

その際には、一般的に当然と考えられている、根抵当を設定したり、定期預金を組んだりしないとのことです。それは、それらの担保を提供してもその限度額まで融資を受けれることはないし、経営の足かせになるからです。

その代わりに、「3点セット」を差し出すことで、融資を受けるそうです。
1. 経営計画書
2. 経営計画発表会
3. 銀行訪問

担保を差し出すより、こちらのほうが、経営も強くなりそうです。

2016年3月5日土曜日

873.「頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?」 高橋 政史

方眼紙は確かに書きやすそうです。

字は整うし、ノートと異なり、縦横どの方向にもきれいに書けます。

矢印などで線を引くのも便利です。

ただ、本書で提案されている方眼紙を使った4分割の書き方は、どこまで効果があるのか分かりませんでした。

テーマを整理し、俯瞰できるようになると思いますが、この記載をするためには、考えがまとまった上で、清書することが必要と感じました。

つまり、発想の途中段階では、きれいに書くことが障害となるので、新たな発想をこのフォーマットで生み出すことは難しいと思います。

学生が勉強の整理として、また、ビジネスマンが簡単なプレゼンテーション資料として、作成し使用する分には、効果があると思いました。

2016年3月4日金曜日

872.「リターン」 五十嵐 貴久

「リカ」の続編です。

「リカ」では、ストーカーのリカに本間が拉致されたところで話が終わります。

本間が失踪してから10年後。高尾でスーツケースに詰められた遺体が遺棄されます。遺体は男性で両手両足がなく、眼球、耳、鼻、舌が切断されていました。これは死亡した時に失われたものではなく、生きながら切断され、切断後も生存していたものと鑑定されました。

遺体の身元は、10年前、リカに拉致された本間と判明。リカに肉体を切断された後、リカに世話されていたものと考えられました。

迷宮入り事件を追うコールドケース捜査班の尚美と孝子は捜査に加わります。捜査が難航する中、孝子の恋人、捜査一課の奥山の連絡が途絶えました。彼の自宅に向かった二人が発見したものは・・・

「リカ」のように、リカから執拗に追いかけられるのではなく、リカが殆ど現れず、追う立場を中心に描かれているため、あまり怖くありません。

続編ということで興味が惹かれましたが、前編の恐怖を上回ることは難しいようでした。

2016年3月3日木曜日

871.「ゼロ秒思考[行動編]―――即断即決、即実行のトレーニング」 赤羽 雄二

即断即決、即実行を実践できるようなトレーニングが紹介されています。

ゼロ秒思考の続編です。

ゼロ秒思考は、簡単に言うと、「A4の紙を横置きにして、タイトルと日付を書き、思いついたことを、尽きるまで書くこと。」です。

これをやることで、頭のなかに浮かんでは消え、ループした考えが言語化され、すっきりします。手軽でお金がかからず、気持ちがスッキリする効果があります。

ではなぜ、続編が出たのかといえば、継続する人が多くなかったからではないでしょうか。その理由は、書き出すだけでは、気持ちがスッキリするが、問題が解決しないこともあるからと想像されます。

本書は、この基本のゼロ秒思考に2つのトレーニングを組み合わせることで、問題解決を図り、継続を促そうとしたものと思われます。

2つのトレーニングは、「オプション」と「フレームワーク」。
「オプション」は、問題解決のための複数の選択肢を作り、設定された基準で数値化し、感覚でなく数値で選択肢を選択する方法です。
「フレームワーク」は、縦軸と横軸を設定し、問題がどこの象限に位置するのかを視覚化することで、問題の本質を把握する方法です。

どちらも、目新しいものではなく以前からある方法です。ただ、ゼロ秒思考と2つのトレーニングを組み合わせることで、新しい手法が生まれたと思います。

非常に、効果的で実用的な方法であり、実行するのに費用がかからないので、継続していきたいと思います。


2016年3月2日水曜日

870.「人生に疲れたらスペイン巡礼 飲み、食べ、歩く800キロの旅」小野 美由紀

この本で、スペイン巡礼を初めて知りました。

スペイン巡礼とは、四国お遍路のスペイン版。
カトリック三大巡礼路のひとつ、カミーノ・デ・サンティアゴ。キリスト教の聖地であるスペイン、ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路です。

キリスト教徒でなくても参加でき、100キロから証明書をもらえ、全ルートは800キロ。ガリシア地方にある大聖堂を目指します。

巡礼といっても堅苦しいことはなく、ただ、矢印に沿って歩くだけ。途中、世界遺産を観光したり、現地の美味しい料理、水よりも安いワインを楽しむことができます。宿泊も巡礼用の施設があり、とても安いそうです。

映画で紹介されたこともあり、巡礼している人は非常に多いそうです。そんな中で多くの言語や価値観が違う人と飲んだり話したりして、自分の価値観も変わっていくのかもしれません。

是非、自分もスペイン巡礼をしたいと思いました。

2016年3月1日火曜日

869.「実例に学ぶ経営戦略 あの企業のお家騒動」 長谷川 裕雅、 リベラル社

大塚家具、ロッテなど最近世間を騒がせたお家騒動を始め、これまでの有名な後継者争いについて、雑誌の記事などから説明しています。

株式、遺言状、相続の観点からどうすれば、争いを防げたのか解説しています。

結論の多くが、生前に経営者が後継者を指名し体制を固めておくか、後継者が権利承継後、早急に叛乱の芽をつむ施策を打つかでした。

そういった意味では、「経営戦略」というタイトルは風呂敷を広げすぎた感はあります。

騒動の内容を知るという観点では、面白い本でした。