2017年9月28日木曜日

1323.「逆襲される文明 日本人へIV」 塩野 七生

ローマやギリシアを研究しつくした著者ならではの視点から見た、現代日本についてのエッセーです。

イタリアに一日千人、一年間で数十万人の難民が流れ着くことを初めて知りました。しかも、イタリアの海域に入る前にSOSを発信するのですが、人道的見地からイタリアが救助に向かうそうです。

イタリアは他国への負担の分担を求めるそうですが拒絶されてしまい、結局イタリアの負担に。こうなると経済的負担は勿論の事、社会の仕組みも変容してしまいます。

かつてのローマはこういった問題をどう解決していたのか。それは自国民と難民の待遇を区別していました。そんな環境でも難民は努力して、その子供たちが医者になるなどして身分を上げていったそうです。

しかし、現代では人権的な観点から、難民にも自国民と同等の社会保障などを与えます。これが大きな負担となり財政を圧迫しているのです。

確かに、自国民と難民を区別することは酷いことのように思えますが、難民に最低の補償を与え、自分の努力(もちろん努力では及ばないところはサポートすべきです)で身分を高め、社会に同調することも必要だと感じました。

2017年9月26日火曜日

1322.「巨匠に教わる絵画の見かた (リトルキュレーターシリーズ)」 早坂 優子

年代順に画家ごと画家の代表的な作品に説明しています。

画家の歴史的、技術的な解説に加え、時代背景や画家に影響を与えた画家も分かり絵をよく理解できます。

それに加え、有名な画家によるコメントもあり、専門家から見た絵の見どころや批判なども面白いです。

私のように絵に詳しくない人間でも楽しく読めて、勉強することができる一冊です。

2017年9月25日月曜日

1321.「超訳ニーチェの言葉」フリ-ドリヒ・ヴィルヘルム・ニ-チェ、 白取春彦」

 「一日の終わりに反省しない」
意外な言葉でしたが、それは疲れ切っているときにする反省はすべて鬱への落とし穴になるからだそうです。

言われてみれば納得が行きます。まじめに一日の反省をする真面目な人ほど、疲れによって自分を責め過ぎて病んでしまうのかもしれません。


「満足が贅沢」
哲学者エピキュロスは快楽を追求した結果、小さな庭、数本のイチジクの木、少しばかりのチーズ、3~4人の友人で十分に贅沢に暮らせるという結論に至りました。

私も、ビール、柿の種、ゆったり眠れる布団があれば十分に満足できるように思えました。

「職業がくれる一つの恵み」
人生の憂いに襲われた時、慣れた仕事に没頭することで苦しみから逃れられ、そのうちに事態が好転することも有り得るとのことですが、その通りだと思いました。

どれも深い示唆に富んだ179の箴言からなります。自分にあてはまるものが、いくつか見つかるものと思います。

2017年9月22日金曜日

1320.「今度こそ読み通せる名著 スマイルズの「自助論」」 S.スマイルズ、 夏川 賀央

歴史の教科書に出てきた「西国立志編」が本書と同じ"Self-Help"の翻訳本です。

子供の頃に読んだ渡部昇一訳の「自助論」は、本書より薄かったように記憶していますが、原書はかなり厚いらしく、本書も原書から抜粋しているようです。

豊かでない家庭で育った人たちが自らの努力によって自らを助け、偉大な業績を残していく。今から100年以上まえの欧州での話ですが、現代でも十分に参考になります。「自助」の効果は自然の理なのでしょう。

お金のテーマについては、貯めることに重きが置かれています。
しかし、全編を通じ偉大な仕事を成した人は、稼いだ僅かなお金を惜しみなく自分の研究に投じています。

お金を貯めることはもちろん重要ですが、その貯めたお金を自分の能力に投資することもゴールデンルールであるように思いました。

2017年9月21日木曜日

1319.「父・福田恆存」福田逸

福田恆存の本といえば、評論しか読んでいませんでした。

評論文では革新的かつ断定的な意見で自身に溢れていますが、本書では息子さんから見た素顔の恆存が描かれています。

本書では評論家としてではなく、翻訳家、脚本家、演出家、劇団代表としての顔が中心です。友人との喧嘩や息子との確執などに悩む”人間”福田恆存が描かれています。

劇団運営における資金難、俳優たちの別離、脳梗塞による衰えなどが生々しく、こういった苦悩を抱えていたことに驚きました。

2017年9月13日水曜日

1318.「戦争と平和」 百田 尚樹

本書は、ゼロ戦の蹉跌、永遠のゼロ批判への反論、護憲論者への批判からなります。

ゼロ戦は、当時最高の戦闘機でしたが、それを達成するために大量生産を捨て、飛行士の命を危険にさらしました。それが長期戦において、正反対の設計思想を持つ米軍機に追いつかれ、逆転を許すこととなりました。

永遠のゼロは、発売当初殆ど注目されずあまり売れませんでした。しかし、口コミでじわじわ売れ始め、450万部を売り上げるベストセラーになりました。

命の重さをテーマにした内容ですが、そこを明確にするため新聞記者を対立軸と置いたからでしょうか、朝日新聞に目を付けられ、戦争賛美小説とレッテルを貼られてしまいます。しかし、内容の本質は生きて日本へ帰ることとだが、多くの若者が日本のために自らの命を散らさざるを得なかったことだと思います。

日本国憲法は、法律に素人のアメリカ人の若者がコピペで7日で作り、2日で翻訳されたものです。しかし、それがWIGPで神格化され、今や日本を縛るカルトの教義となっている感があります。

「9条があるから平和でいられる」という主張も、中国の尖閣侵攻と北朝鮮の核保有により説得力を失っています。早急に日本と日本人を守れる憲法への改正が必要と思いました。

2017年9月12日火曜日

1317.「マンガ 自営業の老後」 上田 惣子

私は自営業者ではないのですが、自営業者に少し近い働き方をしており、いつ自営業者になるかもわからないので、興味を持って読みました。

特に、保険、投資、不動産、営業がとても勉強になる内容でした。

保険は、公的保険を中心に医療保険を細かく掛ける。
不動産で儲けるのは、非常に難しく、様々なリスクがある。
営業は細かく探客するより、勉強したことを発表して向こうから声がかかるようにする。

収入が不安定で波がある自営業。しかも50歳を過ぎると仕事の発注者が現場を離れ、仕事も先細りしてくる。そんな状況にも負けないで保険、年金、仕事をうまくコントロールしている体験談が非常に参考になります。

2017年9月11日月曜日

1316.「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」」 山口 周

現代の企業が直面する問題として、「論理的・理性的な情報処理スキルの限界」があるそうです。その原因は、
1.「正解のコモディティ化」
論理的思考など誰でもできる思考方法が広まったため、皆が正解をだせるようになった。
2.「方法論としての限界」
問題の要因を単純化して解決するアプローチに対し、要因が複雑に変化するようになった。

その結果、「差別化の消失」が起こり、企業はそれでも差別化を求めるため「早さ」と「安さ」に走り、利益の架空計上や従業員の過労死が起こると指摘しています。

経営を「クラフト」「サイエンス」「アート」という3指標に分類したところが面白いです。

マッキンゼーが引き合いに出されていますが、ベテランコンサルタントの経験で売上を伸ばしていたのが「クラフト」。
それだと売上が頭打ちになるので、優秀な学生が簡単なトレーニングでできるように知識を汎用化したのが「サイエンス」。
売上は飛躍的に伸びたが「正解のコモディティ化」でコンサルの成果が上がらなくなってきたため、デザイン会社を買収したのが「アート」。

アップルやマツダなど、最近業績を挙げている企業はアートに強い拘りを持っていることが分かりました。個人としても「美意識」を鍛える必要性があることを痛感しました。

2017年9月6日水曜日

1315.「闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉」浅田 次郎

まだ、武家社会の残滓が残る大正時代。社会は混乱から抜け出し始めていたが、依然として激しい貧富の差がありました。

松蔵の父はバクチで身を持ち崩し、松蔵の姉を女郎部屋へ売り飛ばし、松蔵を盗賊へ預けます。松蔵が預けられたのは、義賊と名高い「細目の安吉」。

盗人一家で育ちながらも、筋目が通った粋な義兄弟達に生き方を教えられ松蔵は逞しく成長していきます。

ある日、町で知り合った吉原の女郎部屋の息子を伝に、生き別れになった姉の行方を探すのですが・・・。

貧しさに抗いながら、社会の理不尽さに立ち向かっていく姿に胸が打たれます。



2017年9月5日火曜日

1314.「大人の覚悟――お悩み上手のあなたへ」三石 由起子

著者はテレビやラジオで悩み相談の相談員を歴任しています。

そこで気付いたことは、「悩むこと」が「真面目に生きること」だと思いこんでいる人々が多いことだそうです。

自分の楽しみを放棄して、深刻な顔して暮らすことが「誠意」であり、「正義」であると思い込んでしまっていると指摘します。

確かに、日本人にはこの傾向が強いように思います。「悩むこと」は真面目な人間の証のように感じられるのかもしれません。

人は悩みのないことまで悩むようになったとして、「孫の登校拒否」「息子の彼女の態度」「娘夫婦の家庭の問題」「親戚の遺産相続」などが挙げられています。これらは日常、悩みとしてはごく当たり前のようにも思えますが、言われてみれば、自分の直接的な問題ではなく、悩むことはお節介であるのかもしれません。

自分の悩みは、実は全く悩む必要のないものかもしれないので、冷静になった見直すことを習慣としたいです。

2017年9月4日月曜日

1313.「今度こそ読み通せる名著 マキャベリの「君主論」」夏川賀央、 マキャベリ

昔からずっと読みたかった「君主論」。
これまで何度か挑戦しましたが、なかなか内容が頭に入りませんでした。

本書は、「君主論」が非常にやさしく訳されているので、とても読みやすいです。

遠い昔の政治の話ですが、その本質は今でも役立つと思います。

「あらゆる君主国にとって基盤となるものとは、よき法とよき軍です。」日本の憲法はよき法と言えず、自衛隊は頑張っていますが未だ軍と認められていません。そうなると日本は基盤が弱いということになります。

「自らの軍もなく存続している国は、ただ幸運だったにすぎない。」
憲法9条があるから日本は平和なのでという意見もありますが、私はマキャベリの「ただ幸運だったにすぎない。」の意見に賛成です。

国の存立について、考えさせられる良書です。

2017年9月1日金曜日

1312.「たのしごとデザイン論〈クリエイターが幸福に仕事をするための50の方法論。〉」 カイシ トモヤ

ロゴとマークの明確な定義がとても勉強になりました。結構混同することが多く、曖昧ですね。

ロゴは、図案、象徴化された文字列のことです。
マークは、企業の理念や社風などを象徴的に表した絵や図形の記号のことです。

そして、ファッションのハイブランドはマークを持っていることが多く、カジュアルなブランドはロゴタイプのみでできているという指摘はうなずけます。

そして、センスは「無意識の記憶の蓄積」、言い換えれば「脳に蓄えられた情報」のことだそうです。見たり体験したりした情報が積み上げられデザインを考えるときに、それらが複合的な形で取り出されます。だから、「良いものを沢山見なさい」と言われるのです。

これから活躍できるスペシャリストは、たった一つの能力に特化しているのではなく、セカンド、サード的な属性を持っているという指摘に賛成です。「映画に詳しい」「スポーツが得意」「書道をやっている」という、一見関係ないように見える事柄が将来活きてくると言えるので、自分も多趣味でありたいと思いました。