2015年11月30日月曜日

777.「キャロリング」 有川 浩

倒産が決まった子供服メーカの最後の数日間に起きたスリリングな物語。

なんだか、文体がこれまでと違うような気がしました。現実的な描写を少し薄くしたような印象です。

登場人物の大和、航平、赤木のそれぞれが両親の夫婦関係によって傷ついて育っています。
母親を守るために強くなろうとしたが逆に母親から恨まれることになった大和。
両親の両方が好きなのに離婚により家庭が引き裂かれてしまう航平。
父親の借金返済に巻き込まれ、将来の夢も持てずに借金取りになってしまった赤木。

夫婦関係とお金の問題でトラブルに巻き込まれた3人。それぞれが望むような結末に至りませんでしたが、みなにクリスマスが訪れ、心の平穏を得ることはできたのではないでしょうか。



2015年11月29日日曜日

776.「亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな」 三橋貴明

「日本の農業、農家は世界で最も保護されている。」
「全農が独占的に農家や農協に高く農薬や肥料を売りつけている。」
「全中は、政治運動で司令塔の役割を果たしている。」

私もこのように信じていましたが、これらは全て嘘だそうです。

日本の農家の所得に占める「直接財政支出(税金からの支出)の割合は、主要国中最低で、アメリカが採用している輸出補助金制度もありません。

農家は全農から農薬を買い付けなければならない義務もありません。

全中は農協が支払う「賦課金」で成り立ち、支配するどころかお客様です。

農協は農家にとって利益を無、引いては日本国民の食の安全を守り、食料を安く安定して供給する役割を担っているそうです。どこに問題があって解体されるのでしょうか。

では、誰が解体を望んでいるのか。著者は、アメリカの金融業界と穀物メジャーだと指摘します。これらのグローバル企業がアメリカ商工会議所を動かして、日本政府に圧力をかけ、規制改革会議が要求通りの内容を通しているのです。

つまり、新自由主義に基づくグローバル企業が市場として有望な日本の農業と共済を簒奪するために、策を巡らしているようです。

農業や乳業を効率化すべきといっても国土の殆どが山林で狭い日本では、広大な土地を持つアメリカやニュージーランドに敵いません。しかもこれらの国は補助金も受けています。

海外市場を狙えといっても、米や小麦といった主要農産物では決定的な価格差があり、何回か買ってもらえても常食足りえません。

農協が存在しても、日本国民として不利益を与えられていないどころか、共済などでは利益を得ているので解体する理由をないと思います。食料安全保証の観点からも農協を守っていきたいと思いました。



2015年11月28日土曜日

775.「知らないと取り返しがつかない 不動産投資で陥る55のワナ」 小林 大貴

この種の本は、年収が低いが不動産で巨額の資産を気付いた人か、投資用不動産を販売している人が書いているので、デメリットにも多少触れるものの、ほとんどがメリットについて書かれています。

本書はコンサルタントが書いているので、かなりデメリットや留意点が書かれており、不動産投資に興味ある人はかなり勉強になると思います。

オーバーローンの罠や法人融資の罠は、なかなか語られないことで特に勉強になりました。

不動産投資は楽して儲けられるものではなく、事前にしっかり勉強することや頭金をしっかり貯められる自己抑制が必要と思いました。

また、信頼できるアドバイザーが重要とも感じました。



2015年11月27日金曜日

774.「ラスト・ワルツ」 柳 広司

第2次世界大戦前に日本軍の諜報機関として作られたD機関。そのD機関の暗躍を描く「ジョーカー・ゲーム」の4作目です。

本作は3つの短編からなりますが、いつものように特定の主人公はいません。スパイゆえに毎回違う人物の名前と経歴が与えられることもその理由です。唯一共通する登場人物は、D機関を設立した「魔王」こと結城中佐のみです。

本作も二重、三重に仕組まれたトリックに予想を裏切られながらも、話の不整合さを感じませんでした。

ウィットの効いたスパイ小説です。



2015年11月26日木曜日

773.「推定脅威」未須本 有生

2014年の第21回松本清張賞受賞作です。国産戦闘機の墜落の謎に迫るミステリー小説。

領空侵犯した航空機を追っていた国産戦闘機TF-Xが低速飛行中に突如墜落します。パイロットはベテランで天候も問題がありませんでした。

半年後に領空侵犯した航空機を追ったいたTF-Xが、今度は燃料切れで墜落します。燃料がまだ残っていると表示されていたにもかかわらず。

この2つの事故に疑問を抱いた、TF-X製造会社の社員である定本は、自己原因の調査に乗り出します。そして、自己の裏には国産戦闘機受注にまつわる秘められた争いがありました。

登場人物の発言や行動に不自然な点が多いものの、自衛隊の戦闘機開発にまつわる様々なエピソードが織り交ぜられ、勉強になりながら楽しめました。



2015年11月25日水曜日

772.「ふせん1枚から始める『事業計画』 ~たった1日でできる“戦略シート"のつくり方~」 日野眞明

著者が考えた、事業計画書を1日で作成するプログラムを解説した本です。

ふせん1枚から始められますが、実際には大量のふせんを使用します。
「午前の部」でふせんを使った「Moreメソッド」で現状を把握し、「午後の部」でマーケティングを学びます。プログラムにそって進めれば、専門知識を使わなくても、やさしく事業計画を作成できるように作られています。

とても簡単に読めて、やってみたくなる内容です。ただ、自分一人で一日中やるには、強い意志力が必要かも。

効果はあると思いますので、社内で有志が集まってやってみるといいかもしれません。



2015年11月24日火曜日

771.「何があっても、だから良かった 人間を磨き、格を高める経営」青木 擴憲

紳士服量販店、AOKIの創業者である青木 擴憲さんの半生録です。

著者の講演会に参加したところ、この本とDVD「親子で学ぶ人間の基本」全12巻と、健康食品をいただきました。無料の講演会に参加してこれほどのプレゼントをいただいたのは初めてです。気前の良さに感動しました。

本の内容は1958年に長野で背広の行商を始めてから今日に至るまでの様々な気付きや学びについて書かれています。

座禅で自己を振り返り、古典から学ぶことを重視し、般若心経や中国古典から学習する一方で、様々なセミナーに参加していらっしゃいます。70歳を過ぎた現在でも続けていらっしゃり、謙虚に学ぶという姿勢が一貫しています。

ごく普通の行商人が一部上場企業の経営者に成長していく姿が余すところなく、描かれています。



2015年11月23日月曜日

770.「沖縄の米軍基地 ─「県外移設」を考える」高橋 哲哉

著者の考えは非常に偏向していると感じました。

引用されている資料は殆どが沖縄タイムスと琉球新報といった左派新聞ばかりです。

既にあるキャンプ・シュワブ内に滑走路を増設することを「新たな基地建設」とミスリードしています。

日本の米軍基地の74%が沖縄に集中しており、不公平だと主張していますが、この数字は米軍の専用基地に限定した数値です。この基地には、横田飛行場、横須賀海軍施設、厚木海軍飛行場といった自衛隊との共用基地が含まれておりません。共用基地を入れると、沖縄の基地は全体の22.6%となります。

『沖縄の米軍及び自衛隊基地(統計資料集)平成26年3月』
(沖縄県HP)http://goo.gl/vwMSEB

(オ)米軍施設・区域の全国比
全国の米軍施設・区域:  132施設 1,027,153千㎡
本土の米軍施設・区域:  99施設  795,393千㎡
沖縄の米軍施設・区域:  33施設  231,761千㎡

全国に占める本県の比率:25.0%    22.6%


沖縄(沖縄県民)対本土(日本人)という構図を作り、日本人が沖縄県民を差別しているかのように主張しています。本当にそうなのでしょうか。

また、振興策といった経済に関する考察がなされていない点にも違和感を感じました。

中国の脅威に対抗することを、沖縄を「日本防衛」のための「捨石」として利用しているといいますが、沖縄も当然日本であり、中国が最初に狙うのは本州ではなく、沖縄自体だと思います。沖縄が侵略されることがないように防衛を考えるべきではないでしょうか。

そのときに、米軍基地を県外に移設すれば、その防衛の真空状態は自衛隊で埋める他によい方法が浮かびません。そうなれば、国防費の大幅増に繋がりますし、基地自体も減らないことになります。

最初は、沖縄の占領にともなった基地建設という悲しい歴史の産物でしたが、中国が脅威となった現状では沖縄占領を防ぐ重要な施設だと思います。フィリピンで米軍基地が撤退した後に中国が埋め立てをして南沙諸島の領有権を主張しているという事実がこの脅威の証明です。


2015年11月22日日曜日

769.「会社を強くする多角化経営の実戦」 山地 章夫

著者は、札幌で50事業を経営し、年商160億円の企業グループを運営している企業家です。

中小企業は、資金も人材も限られているので一つの事業に集中することが普通と考えていましたが、著者によれば、それは儲けるということを諦めることだそうです。その理由は、中小企業は市場規模も小さく、価格決定権がなく、いきなり市場が大きくなる可能性がないので良くて現状維持、どんなに頑張っても5%伸ばすのがやっとだからです。

「選択と集中」とよく聞きますが、それは本来大企業が生産性を上げて、高収益モデルになるための戦略、あるいは経営難の状態に陥った企業が巻き返しを図るための戦略だそうです。確かに、大手企業は多角化しており、業績が厳しくなったときに、「選択と集中」と言い出して事業を整理しています。

そして、多角化をしない企業は景気の波に左右されなんとか生き延びているということが多いように思えました。単一の事業で企業を大きくさせる、もしくは大きくさせないまでも安定させていくためには多角化が有効なように思えました。

本書は多角化経営について、その意義や方法を教えてくれる教科書のような本です。中小企業の経営者は近くに置いて、繰り返し読むと効果がある本だと思いました。


2015年11月21日土曜日

768.「嗤う淑女」 中山 七里

天賦の美女、蒲生美智留によって踊らされる人々の悲劇を描いた5つの短編集です。

野々村恭子はその容姿ゆえに中学校のクラスメイトからイジメを受けていました。そこに従兄弟の美智留が転校してきます。イジメの対象は恭子から美智留に移りますが美智留の計略により解決します。

家庭で虐待を受けていた美智留に強力した恭子は、深い闇の世界に堕ちていきます。そして、弱みを持つ人々を次々に陥れ、2人はすべてを思うままにできたように思われたのですが・・・

著者らしい毒のある作品でした。最後のトリックはデビュー作の「いつまでもショパン」に似ていますが、最後まで面白く読ませる作品でした。