2015年9月3日木曜日

714.「土漠の花」 月村 了衛

自衛隊の海外派遣に関する非常に今日的問題を小説にしています。

ソマリア国境付近で墜落したヘリコプターの救助活動をしていた陸上自衛隊第一空挺団。そこにソマリアの一氏族最後の後継者である女性が助けを求めて逃げ込みます。間髪入れず敵対する部族が銃撃を加え、3名の自衛隊員が死亡、残りの隊員が武装解除されてしまいます。

生き残った隊員は7名。娘を守って闘うのか、娘を引き渡して逃げるのか。「未だかつて戦ったことのない軍隊」である自衛隊がテロリストに対抗できる戦力を持っているのか。自衛隊の海外派遣において最も恐れていた状況に直面します。

自衛隊は軍隊か、隊員に人を殺せる覚悟があるのか、戦闘のない海外派遣は永続できるのかなど、現在抱えている問題を考えさせられるます。

息をつく間ものい展開で一気に結末まで引きこまれます。そして、最後は意外な事実が・・・。
理不尽な戦闘の中で、己の過去や主義に悩みながらも、忠実に責務を果たす隊員達の姿に胸が打たれました。