一男は、弟の借金3,000万円を肩代わりします。
借金返済のため、日中、図書館で働いたあと、夜にパン工場でアルバイトをしています。
月に20万円を返済していますが、完済までにあと30年はかかります。
借金が原因で妻とは不仲になり、妻は、一人娘を連れて家を出て行きました。
そんなある日、彼が持っていた宝くじが当選し、彼は、3億円を手にします。
借金も返済できて家族も元に戻ると、嬉しいはずなのですが、彼は、その扱いに当惑していきます。そして、彼は、親友で起業家の九十九に、3億円について相談します。
お金とはなにか、お金と幸せの答えについて、問いをなげかけられます。
九十九、十和子、百瀬、千住、万佐子、それぞれのお金に対する考えが語られる中、いろいろと思考することができます。
正直なところ、読み終えても、自分の答えはでませんでした。本書と波長が合う人は、気付きがあるかもしれません。
著者は、以前にも取り上げた「ネガティブシンキングだからうまくいく35の法則」の森川陽太郎さんです。
内容は、「OKラインを低く設定する」という基本コンセプトは同じです。
具体的なトレーニングで気に入ったのは、「感情日記」を書くことと、「1分間つぶやき」です。
「感情日記」は、「今日は◯◯ですごく腹が立ったなどの感情だけを記録する方法です。これにより、素直な感情、等身大の自分と向き合えるようになるそうです。
「1分間つぶやき」は、腹が立つことがあったら、「ムカつく、ムカつく、ムカつく・・・」といった感情だけを端的な言葉で1分間つぶやき続ける方法です。これにより、自分の中にある感情を客観的に受け入れられるようになるそうです。
自分でもやってみたいと思いました。
著者は、暮しの手帖編集長です。
本書は、丸ごと一冊自分のルール集です。著者は、それを厳格に守っています。頑固で理屈っぽい人だと思いました。
食事は、6時13時19時で、夜10時に寝て朝5時に起きます。「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」が理念です。
著者の周りの人はどう感じているのでしょうか。対応が決まっているから理解し易い? それとも、少し堅苦しい?
これだけ決めると、本人としてはブレないので生きやすいのかもしれません。
私には合わないと感じましたが、異なる価値観に触れることが出来て勉強になりました。
37歳で医師になったという異色の職歴を持つ著者が30歳にして医学部に入学するまでの物語です。
著者は2浪して、東京大学工学部に入学します。東京で一人暮らしをしていた著者は、出張で東京に来ていた父と夕食を共にします。長年のわだかまりが解けて、やっと素直に心を通わせるようになります。
しかし、その夜、ホテル・ニュージャパンで火災が発生し、宿泊していた父は巻き込まれて焼死してしまいます。呆然とする著者は、父の記憶を遠ざけるようにして生活するようになります。
大学時代はナンパに明け暮れ、大学院に進んではパチプロとなり、結局、退学してしまいます。入社した商社は激務のため、1年で退職し、次に入社した外資系メーカーではうつ病を発症して退職します。
通院先の3人の医師の診療に不満を持った著者は、
「これなら、僕のほうがよっぽどマシな医者になれる。」
と考えます。そして、封印していた医師だった父の記憶に向き合い、30歳で京都大学医学部に入学します。
正直なところ、大学時代と大学院時代の話は、軽薄で無責任すぎてうんざりします。恐らく、自分が人の子の親であるからだと思います。
しかし、自分の大学時代を振り返ってみると、あまり大差がなかったようにも思えます。20代というのは、成人式を過ぎ、大人と見られていますが、内実は無責任で目標も曖昧でその時々を浮遊しているのかもしれません。
3回のトーク・イベントをまとめた内容です。
内容は、タイトルほど読み手を挑発するものではありませんでした。編集者の売上目的のアオリ文句に感じられました。
2人とも、自分の価値観を語っており、他人の価値観を変えようという意図は感じられませんでした。
「ふーん、そういう考え方もあるのか」と感じますが、ここを真似してやろうとか、ここを深堀りしてみようとか思うことはありませんでした。
トーク・イベントの与太話をあえて書籍化する必要があったのでしょうか・・・
著者自身の人生訓です。まずやってみて、動きながら考えろということでしょうか。それ以上でも以下でもないです。編集者が何故これだけの内容を出版しようと企画したのか不明です。
著者が女性として起業して成功しているからか、それとも自費出版に近い宣伝本なのでしょうか。
様々な本を読むようになり、以前は好きだったビジネス書の多くが内容が薄いように感じてきました。どれも1~2時間で読めてしまいます。本書もその類です。
そして、その内容が本当にその成功の要因だったのかに疑問の目を向けるようになりました。さらに、本当にその人が成功しているのかすら怪しいと感じます。
第2話は、ブラックジャックの話です。
この漫画界の金字塔とも言える作品は、連載開始当初、5話程度で終わる短編の予定だったことは驚きです。しかも、第1回目は巻頭カラーでなく、告知も地味。殆ど期待されていなかったそうです。
なぜなら、この時期の手塚治虫の人気は下降しつつ合ったからです。自身が経営するアニメプロダクショは倒産し、連載は次々打ち切られ、原稿料もBクラスに落ちていたそうです。しかし、連載後徐々に火が付き、結局200話を超えるまでの長期連載となりました。
手塚は医師免許を持っていたのですが、ペーバードクターでした。そのため、誤った情報に基づく話もあったそうです。そういった話を修正したり、削除してりした結果、ある巻に複数の版が存在するようになりました。本作はロボトミーに関する話を差し替えたために起きた第4巻が謎のキーになっています。
3つの謎をベースに栞子と大輔の恋愛が進みます。
そして、「・・・ここに残るなら気をつけなさい。」という母の言葉と、
「連絡しろ」という田中の伝言がシリーズ後半に向けた謎をほのめかしています。
人格者で「神様」と呼ばれた、元中学校校長の坪井が心不全のため68歳で死去します。
坪井を慕う、多くの元同僚や元教え子が通夜に参列し、涙します。そして、それぞれが故人との思い出を独白します。
故人からしてもらったことが沢山あり、それが更に涙を誘います。しかし、その思い出のなかでところどころ、おかしな点に気づきます。
通夜振る舞いで参列者が言葉をかわすと、その小さかったおかしな点が相互に関連づいていきます。そして、神様の裏の顔が徐々に浮かび上がっていきます。
果たして、坪井は本当に「神様」だったのでしょうか。
第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作です。長編ながら文章が読みやすく、どんどん読み進んでいけます。そして、それぞれのささいな疑惑がどんどん関連づいて、真実が明かされていくところがとても面白いです。
本書は、ドイツに住む日本人の著者がドイツ語で著したものの翻訳です。ドイツ人の日本人に対する偏見に反論することを目的に書かれました。
日本人にとっては、ある程度の基礎知識がある内容を正確かつ精緻に説明し、さらに著者の解釈が加えられています。
日本の歴史や文化を知らない外国人が読むと、驚くことばかりではないでしょうか。それは、白人にとって、江戸時代までの日本は、キリスト教を信仰しない野蛮人が住む未開の国であり、明治維新により、白人の文明を教わってやっと文明化したと思われているからです。
江戸時代の江戸の街並みは、とても美しかったようです。それが欧米化と大東亜戦争の戦果により、殆ど失われてしまったことが惜しまれます。日本の文化や習慣を再認識して、日本らしい国を創り、自信と主張を持って外国と堂々と渡り合いたいものです。
ひきこもりの実例が豊富ですが、読んでいると気分が暗澹とします。どうやって生活しているのか、これから仕事につけるのか、犯罪に手を染めないか、家族に迷惑をかけていないか。
ひきこもりの子供の中で特に難しいのは、親が学校の先生、医者、弁護士という先生と呼ばれる職業についている子供だそうです。「しっかりとした社会的地位についている親なのに何故?」と思いました。こういった親は、職業柄他人から感謝されるため、子供が「感謝されたい。反省したくない。」というパーソナリティを持つことが多いそうです。その結果、子供は変なプライドを持ってしまい、周囲から生意気との誤解を生じてしまいます。
ひきこもりの子供に対して、ゴルフを使って更生を図るという手法に驚きました。そして、非常に効果が高いそうです。ゴルフは、自分との戦いであり、思い通りにいかないことが殆どで、マナーに厳しいからだそうです。更生した子供達の実例を読んで、ホッとしました。
中華人民共和国の韋国家主席は、ついに南シナ海の領有権を主張し、具体的な行動に出ると宣言します。
その一方で、中国のサイバー軍事集団が設立されるに至った経緯が描かれ、その中心人物である<センター>童の正体が明らかになります。
彼の影響力は既に全世界へ広がっており、ペンタゴンのコンピュータシステムも侵入されています。そして、米軍の3機の無人機がその遠隔コントロールを奪われ爆破されます。
そして、中国人民解放軍はフィリピンのスカボロ礁を占拠します。
1巻で種まきされた内容が、2巻で結びつき始め、徐々に面白くなってきました。
ミンスは、父を亡くし、博打狂いの母親との2人家族。かつては、棋院に所属し、囲碁のプロになることを目指していましたが、今では碁会所の賭け囲碁に身を持ち崩しています。
ミンスは、ある事件をキッカケに、ヤクザの組長ナムに囲碁を教えることになります。ナムは、ミンスの才能に惚れ込み、自堕落な人生に落ちていこうとするミンスにプロ棋士への道を再び目指させます。ナムも囲碁に向かううちに、自分の人生を振り返り、ヤクザから足を洗おうとします。
しかし、地上げの事業に巻き込まれ、2人の人生は大きく変わっていくことに・・・
囲碁をヤクザの組長に教えるという設定に魅力を感じずに見始めましたが、なかなか面白かったです。ラストもスッキリしました。
日本語の短文の中に、法律用語を一つ配し、その対訳を併記することで実用的な法律英語を学べるようになっています。
合間のコラムでCompanyとCorporationの違いや、Co.,Ltdの中間のカンマの要否についてなど、日頃使っていても、よくわかっていない用法などについて解説されています。
様々な法律英語を学べて、勉強になりました。
父は、定年退職し、暇にかまけて山登りに熱中しています。
母は、家事と孫を世話しながら、子供達に生活費を無心しています。
兄は、妻の体が弱く、子供がいないうえ、仕事をリストラされます。
妹は、心臓に持病があり、離婚したうえ、自閉症の子供を育てています。
弟は、大学を卒業しましたが、仕事がないうえ、教育ローンの返済に追われています。
母の誕生日に、弟は運転代行の客とトラブルを起こし、兄を巻き込んだうえに、家族に不幸をもたらしていきます。
韓国の低迷する経済を背景に、その中で、もがき苦しむ普通の家族の姿を描いています。
リストラ、大卒無職、離婚といった韓国の問題は、決して他山の石ではありません。日本はデフレの中、資産、人間関係などを取り崩して凌いできました。日本も選択を誤ると、韓国化し、こういった悲劇が頻発する社会になるおそれがあると思います。
北海道の湿原に建てられら、ラブホテル「ローヤル」を舞台に7人の人生が描かれます。誰もがごく普通の人ながら、情欲に駆られ日常を一歩踏み外す。人間の秘められた欲情を豊かな描写で暴き出しています。2013年の直木賞受賞作品です。
登場人物の生活が現実的過ぎて、気分が悪くなりました。仕事の厳しさ、老いの臭い、老後の無収入、僻地の貧困などが非常に生々しく描かれています。
そういった状況で、事件が起こるのですが、きっかけは日常の歯車が少し狂っただけなので、誰にでも実際に起こりうる事件です。そして、現在の日本の閉塞感も感じられる作品でした。
著者の森川陽太郎さんは、OKラインメンタルトレーナーです。奥さんは、プロゴルファーの横峯さくらさんです。
本書では、書店にあふれているポジティブシンキングや成功のイメージを描くといった手法に拘らなくてもうまくいくと主張しています。逆にそういった方法は、少しでもその通りに行かないと、その失敗に対応できないで、さらに大きく失敗してしまうことがあると説明しています。
35のいろいろな法則が書かれていますが、私が気に入ったの以下の法則です。
「”確実にできること”にOKAYラインを設定する」
自分でも心がけていることであり、効果を実感しています。
「失敗を受け入れるけど、反省はしない」
それでもいいんだと、安心しました。どうしても自分を反省に追い込んでしまいがちですが、反省しても同じことを繰り返してしまうので、反省しすぎてもあまり意味がありません。
「”絶対にできる”と自分に言いきかせることをやめる」
世の中でもてはやされているポジティブシンキングへのアンチテーゼです。成功していることをイメージするというアメリカ的な積極思考は、想定外のことが起きると慌ててしまい、うまく対応できません。
「”嫌い”のまま相手と付き合う」
それでいいんだとホッとします。いいところを見つけて相手を好きになるという考え方もありますが、好きになれない自分が悪いんだと、自分を責めてしますことにもつながります。
「”ルール”を一行で書きだしてみる」
これは、僕もやっています。自分自身の実体験から自分の人生訓を作ると、行動がぶれないし、自分にとって実際に成功したルールなので、似た状況では成功の確率が高まると思います。
「”コントロールできるもの”と”コントロールできないもの”を分ける」
デール・カーネギーの「道は開ける」でも書かれていることです。これをすることで無駄なことに心が捕われないようになり、できることに集中できます。
4巻は、江戸川乱歩にまつわる物語です。
3巻までは、1冊で3冊の古書を紹介す短編でしたが、4巻は1冊丸ごと江戸川乱歩に関する長編です。1冊にまつわるエピソードだけでもすごいのですが、一人の作家についてここまで語れるのは最早圧巻です。
しかも、4巻では、ヒトリ書房の井上店主と、栞子の母智恵子との因縁まで描いているところが深いです。こうしてみると、1巻の段階で智恵子の話を含めて全体像を描いていたのでしょうか。その世界観の広さに驚きます。
僕も小学生の頃、少年探偵団に夢中になりました。少年探偵団の1作目が書かれたのが昭和11年で、その後25年間も書き続けられたそうです。僕が読んだ時点で、すでに40年近く経っていたとは、これまで全く気づきませんでした。
テーマとなる古書の内容と本編がうまくリンクしています。話の設定にも無理がないので素直に読めます。
本にまつわる謎解きだけだったら、毒のない児童文学ですが、短篇集を貫く本流に失踪した母親の謎があるため、大人でも楽しめるミステリーになっています。
今回の古書は、「たんぽぽ娘」「チェブラーシュカとなかまたち」「春と修羅」です。
「たんぽぽ娘」は読んでみたいと思いました。
「チェブラーシュカとなかまたち」は、しのぶの心情や母の本心をよく表しています。
宮沢賢治の逸話はとても面白く、勉強になりました。
東日本大震災から5日後の福島県で原発作業員の金城純一が刺殺されます。加害者の加瀬邦彦は逮捕後に隙を見て逃走します。邦彦を逃した仁科刑事は必死で邦彦を追跡しますが、邦彦が向かっている方向は・・・
福島第一原発を舞台とした設定は時期を得ていて感心しました。しかし、整合性がない部分が多いです。
著者の原子力発電に対する見方がかなり否定的のようで悪意を感じました。原発内の状況や東京電力の組織を描写していますが、偏見もあるようでどこまでが事実なのか分かりませんでした。
原子力発電に対する施策側の驕りを全体のテーマにするため、事件を構築し、それを非難するために太陽神であるアポロンの嘲笑と名づけたようですが、すこし思い込みが強いかな・・・
最後の鮮やかなどんでん返しが魅力の著者ですが、本作はそういったことがなく、ミステリーというよりアクション小説でした。
「私」が帰宅すると、馴染みのデリヘル嬢、エリコが私のベッドの中で強姦され、絞殺されていました。私の家から、幼馴染の冴木の指紋が検出されました。彼は連続婦女暴行事件の指名手配犯でした。
人がどのようにして犯罪者となっていくのか、その過程と心情がとてもよく描かれています。
幼いころの事件をきっかけに同じ体験を持った2人がそれぞれどのように成長していったのか。
狂気の一歩手前まで踏み入った人間と、情欲に囚われ一線を踏み越えた人間のコントラストが鮮やかです。