2015年9月15日火曜日

721.「絶唱」 湊 かなえ

阪神淡路大震災とトンガとの奇妙な縁をつづった4つの短編集です。

テレビ番組のアナザースカイで、著者が作家になる前にトンガで青年海外協力隊の国際ボランティアの活動に従事していたと紹介されていました。その話から4話目は著者自身の体験を素材にしているのではないかと思いました。

トンガで暮らす尚美さんを中心に、彼女とトンガで出会った4人の物語を描いています。4人は尚美さんに紹介してもらった実在の人物がいるそうです。みんな震災で心に傷を負い、その傷が癒えずに生きています。

そんな4人が、物の考え方や生き方が異なるトンガの人達や、偽りなき自然に触れることで再生のきっかけを掴んでいきます。

改めて震災が人々に残す傷の深さ、人間の真の酷薄さを感じるとともに、それらを覆い尽くすことができる温かさに触れた思いがしました。