2016年7月21日木曜日

971.「何者 (新潮文庫)」 朝井 リョウ

大学生の就活を描いた小説です。現代の就活は、自分の頃と違い、とても大変なんだなと感じました。

就活に備え、海外留学、資格取得、インターン、ボランティアに励む。でも、本当はそんなことがやりたかったわけではなく、単に就活に有利だから。

だから、いくら一生懸命にやっても自分ではない、仮面だけが作られていき、面接ではその仮面を次々付け替える。

でも、本当の自分には、やりたくないことをする覚悟や、自分が思っているより社会からの自分の評価が低いことに向き合う覚悟がない。

「何者」とは、現実の自分とは違う理想の自分。そう簡単に「何者」になれない自分は、他人の内定を貶めたり、面接での失敗を笑ったりする。

しかし、自分は一歩離れて傷つかない位置に逃げ込み、本当の自分を曝け出さないまま、応募企業だけが増えていく。

就活という大きな関門が、親から保護されていた自分から、自立していく自分への転換点になるように思いました。