弁理士が主人公の珍しい小説です。
下町に特許事務所を開いた主人公が近所の中小企業を知財によって買収から助けるというストーリーです。
ただ、細かい点で正確ではない記載があり残念でした。
「きっと、せんせーがいい特許を書いてくれます。」
⇒特許は書けません。書くのは明細書で、そこに書かれた発明に特許が付与されます。
「『もし、儲かったら、そのときにいただきます。』とは言ったものの大変な持ち出しになる。」
⇒特許庁に支払う印紙代は払ってもらったとあるので、後は弁理士の手数料です。そのため、持ち出しは殆どないはずです。
「実用新案だと、出願と同時に権利を得ることができます。費用だって格段に安くすみます。」
⇒出願と同時に権利を得ることができるわけではありません。そして、特許出願に比べれば、確かに安いかもしれませんが格段までではないです。また、実用新案は権利行使時に問題があるので多くの弁理士は強く薦めないのでは?
細かい点で「あれっ」と思うことはありますが、発明や権利化の流れがわかり、この分野の小説は少ないので、貴重な作品です。