2013年9月16日月曜日

124. 「名誉の殺人 母、姉妹、娘を手にかけた男たち (朝日選書) 」 アイシェ・ヨナル

「名誉の殺人」という言葉をこの本で知りました。

「名誉殺人」は、婚前交渉したり、親が認めない相手と付き合ったり、町で男性と話したりしたことから「家族の名誉」を守るために、親、兄弟、親戚が娘を殺すことです。

こういった風習はクルド人社会で多く見られます。
クルド人はトルコ、イラク、イギリスなどに居住しています。クルド人社会は完全な男尊女卑の社会で、男性はあまり働きませんが大事にされます。クルド人は、移民であるため就業の機会が少なく、貧困からなかなか抜け出せません。

一方の女性は、家事の重労働に追われ、学習する機会も奪われます。10代前半で親が決めた相手と結婚させられますが、その相手の多くは親戚であり、自分の父親と同じ位の年齢の金持ちの2号である場合もあります。
そして、結婚後は、夫から暴力を受けそれに耐えるしかありません。

この重労働、暴力、貧困、嫌いな夫から逃れるには、逃げ出すしかありません。そして、逃げ出すと一族から殺されるまで追われます。
仮に国を脱出できたとしても追われ続け、時効もないので、うまく逃げおおせたとしても、一生顔を隠して怯えて生きなくてはなりません。

トルコでは2000年から2005年の間に、1,806人の女性が「名誉の殺人」の犠牲になりました。
さらに、5,375人が家族からの圧力で自殺させられました。
「名誉の殺人」の件数は平均して1日1件となります。

「名誉の殺人」とその顛末がもっと世界、そしてクルド人自身に知れわたればいいと思います。
そして、家族が決めた相手以外と結婚した娘を殺すことは決して「名誉」でなく、家族に手をかけた兄弟には決して「名誉」が与えらるどころか、逆に不幸な人生を送ることになっていることがクルド人の間で理解、浸透されていくことを望みます。