2013年9月12日木曜日

風立ちぬ

賛否両論の映画ですが、私は見て良かったと思いました。

昭和初期の日本の美しい風景が余すところなく描き切られています。
その色彩感はあたかもモネの絵画のようです。
ジブリ映画に特徴的な空の立体感もこれまでで最も広く、
深く表現されています。
また、映画の中に流れる風も体感できるようでした。

子供の頃から空への夢を描き続けた少年が
世界最速の飛行機「ゼロ戦」を創り上げました。
しかし、その結果は飛行機の数分のパイロットを死に至らしめてしまいます。
二郎の苦悩や葛藤は直接的には表現されませんが、
自らは近視のためパイロットになれず、技術者として多くの犠牲を
出したことに対し、自らの死も覚悟したことと思われます。
その二郎に対し菜穂子の「生きて」の言葉が支えになります。
ジブリ映画のテーマである「生きねば」というメッセージが伝えられます。

薄命であった妻の菜穂子は、夫が仕事を成し遂げるのを見届け
療養所へ帰っていきます。
「自分をあまり省みなくても、仕事で成功する姿を見ることが自分の幸せ」
これが菜穂子の無言のメッセージに思えます。
こうあれば良いのですが、これは男性側の勝手な思い込みかも知れません。
今回が最後の監督業となる宮崎監督ですが、
二郎に自分、菜穂子に奥さんを重ねあわせ、最後の作品で奥さんに
感謝の気持ちを表したようにも思いました。