2014年3月21日金曜日

288.「クラウドクラスターを愛する方法」 窪 美澄

中編と短編の2編からなる本書は、両親の離婚が重要なポイントとなっています。そこから、捨てた親への認めたくない愛情や、必要ないと考えていた家族団らんへの憧憬が描かれています。

人物描写がとにかく上手いです。

最初に登場人物の名前、年齢、家族構成といった属性を提示するのではなく、読者にひっかかるようなポイントだけ与えて、徐々に過去に遡ってそのポイントに関するエピソードを与えていきます。それにより、読者の登場人物に対する理解が徐々に深まっていきます。主人公、紗登子の名前が初めて明かされるのも、82ページ目。

紗登子の厳しい就職話は、フリーライターとして働いていたときの著者自身の実体験でしょうか。