2014年8月20日水曜日

444.「月は怒らない」 垣根 涼介

書き出しの彰の話の感じから、著者の「ヒートアイランド」シリーズに繋がる、バイオレンス小説かと思いきや、次の弘樹の話で、「アレッ?」となり、和田の話で、「どんな話だ、これは?」という感じになりました。

舞台は吉祥寺。
知っている街なので、とてもイメージが湧きやすかったです。


「人それぞれ、自分の人生は自分ものでしかない。裏を返せば、そういう意味で、誰のせいにもできないものだ。」
「人間は、未来に希望を失ったときに人間ではなくなる。」
など、それぞれの人物が人生観を問いかけ、読み手は自分の人生が引っかかってしまって、その問いかけを考えてしまいます。

登場人物や、設定が実に趣深く、普通ではない設定が普通の人生を問い詰める感じがしました。

「月は怒らない」という意味不明なタイトルが、最後に深い人生観を表していることに気が付き、鳥肌がたちました。小説にして哲学書のようでした。