2014年9月26日金曜日

481.「愛なんて嘘」 白石 一文

男女の関係を描いた6つの短篇集です。それぞれの作品に関連性はありません。
一見上手く言っているように見える夫婦のどちらかの心は実は冷めている。
それが「愛なんて嘘」ということでしょうか。

登場人物の心理描写がとにかく細かい。物事を深く多面的に考えています。自分はこんなに色々考えていないし、深くも考えていないので、他の人ってこんなに考えているのかなと不安になります。

ほとんどの作品で登場人物の考え方や行動をあまり理解できなかったので、あまり共感できませんでした。
ただ、「わたしのリッチ」に出てくる邦宏は、有名大学を出て、大手食品メーカーで営業職をやっているが、営業職が嫌いで公認会計士試験の勉強をやっています。しかし、3年経っても合格できず、勉強のために会社を辞めたという話は身につまされ、とても邦宏の考えや行動がよく理解できちゃいました。
また、その邦宏を見つめる妻の小枝子の不満を読むにつけ、自分の妻もこういう目で見ていたのかといまさらながらに気付き、冷や汗が出る思いでした。