2014年10月4日土曜日

488.「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」 門田 隆将

朝日新聞の吉田調書に関する捏造記事が記憶に新しいですが、本書は、震災当時の福島第一原発についてのノン・フィクションです。

運転員の多くが地元出身で、高校の先輩・後輩も多かったようです。生まれ育った土地への愛情と、強い信頼関係が死をも伴う危険な現場へ向かう原動力になったのではないでしょうか。

伊沢当直長が「頼む、残ってくれ」と運転員たちに頭を下げ、若い運転員たちは現場に残ることに同意したそうです。家族とも連絡も取れない状況で、子供たちを残して死んでいくことになるかもしれない・・・それは本当に重い覚悟だったに違いありません。

第一建屋が爆発した後、吉田所長は、最少人員だけを残して、他の人間は退避するよう指示しました。それを朝日新聞は、「所長の命令に反して逃げ出した」と嘘の記事を書きました。そしてその不名誉なレッテルが世界に拡販したのです。朝日新聞の捏造は許されるものでしょうか。

また、震災の翌日に当時の菅直人首相が福島第一原発を訪れました。それにより、現場の多くの人たちの手間を取らせ、現場の人たちの作業を妨害しました。原子炉冷却作業に向かっていた自衛隊がこの訪問のために、現場近くで1時間半も待たされたそうです。一体何をしに行ったのでしょうか。