2014年10月5日日曜日

489.「何もかも憂鬱な夜に」 中村 文則

人間の絶望的側面を描いています。とても陰鬱な文体です。

孤児院で育った「僕」は、拘置所の刑務官として働いています。その本質は檻の中の犯罪者と変わらず、暴力や殺人の欲求を隠して生きています。
しかし、彼は孤児院の施設長から受けた美しいものへの教育によって、犯罪者にならずにいます。

「僕」は、夫婦を殺害して死刑判決を受けた山井を担当することになります。山井も孤児ですが、里親から虐待を受け、まともな教育も受けずに育ちます。周囲から控訴を勧められますが、何かを隠しており、勧めに応じません。

死刑を執行されるにせよ、人間性に目覚めて、人間として死んでいくことは意味があることだと思いました。