2015年1月22日木曜日

562.「One World」 喜多川 泰

著者の初期作品には大変感動させられましたが、ここ数作は感動が薄まってきていました。しかし、本作は久々のヒット作です。

9つの短編からなり、それぞれに心動かされます。説教臭くなく、主人公が学んだことが、その体験とともにスッと肚に落ちてきます。

主人公が悩み苦しんだ時、人との出会いで大切なことに気づき、救われます。そして、主人公を救った人が次の作品に登場し、他の人に救われるという造りになっています。

人は他人との出会いによって教えられ、それが環となり、一つの世界を創っている。そうした作者の思いからOne Worldというタイトルが付けられています。読みながら、自分の日常を振り返り、恥ずかしいと感じたり、大事なものを大事にしていないということに気づいたり、日本という国の素晴らしさを再認識したりできました。

あとがきを読んで、この本のもう一つの仕掛けに気づき、再読しようと思いました。素晴らしい本です。