2015年6月19日金曜日

661.「絶歌」 元少年A:第二部


神戸連続児童殺傷事件の犯人、酒鬼薔薇聖斗こと少年Aの手記です。

あまりに思うことが多かったので、少年院送致までの第一部と、退院後の第二部に分けて感想の述べます。

第二部は、元少年Aが医療少年院を退院した後の話です。

この本を本人が書いたとすれば、非常に文才があると思います。描写もきれいな比喩が多様され、あたかも小説のようです。

引用される小説からも読書量の多さが伺われ、描写が背伸びではなく自ら理解し、咀嚼した言葉が使われています。そして、心理学に対する強い関心が感じられ、知能の高さが滲み出ています。

Aは14歳からの6年間、社会から隔絶され、学歴、友人、社会常識といった重要なものを得る機会を失います。そうして、21歳で退院した彼が社会復帰することは、とても困難となりました。

そんな彼が生き抜くことができたのは、単純なことながら、とにかく働くこと、稼いだお金を貯めること、手に職をつけることでした。中卒で継続した職歴がない彼が、本格的に職を探して3社目で定職を得ることが出来たのは、医療少年院で得た資格があったからでした。

そして、理不尽な出来事を乗り越えることが出来たのは、陳腐な言葉ですが、「一生懸命」仕事に向き合ったことであり、その姿勢を見ている人がいたということでした。

彼は一時期、読書に熱中しました。その殆どは小説だったようです。これが図らずも「読書療法」の役割を果たしたようです。彼のサイコパスの本質は変わっていないと思いますが、読書で多くの登場人物と自分を同一化することで、多様な思考が蓄積し、サイコパスの要素が比率として下がっているのかもしれません。

彼は反省の弁も述べていますが、その真意の程は正直分かりません。
しかし、学歴なく、周囲の好奇の眼に追われ、心を割って話せるパートナーを持てない孤独な人生を苦しみながら生き抜いていくことが2人の人生を奪ったことに対する贖罪なのかもしれません。