2015年7月14日火曜日

679.「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告」 エマニュエル・トッド

今後、世界の脅威となるのは、ロシアでも中国でもなく、「ドイツ帝国」だと警鐘を鳴らしています。

「ドイツ帝国」とは、ドイツ一国ではなく、ドイツと冷戦終了後にEUに加盟した東欧各国やフランス・スペインといったドイツへの従属国です。

脅威とみなされているロシアは、実は日本とほぼ同じ1億4千万の人口しか保有しておらず、GDPのほとんどが燃料と軍事で、脅威とはならないそうです。

中国は経済破綻が明らかになる目前で、多くの国内紛争を抱えています。これらの国がアメリカに対峙できる可能性は低いとのことです。ロシア、中国、インドが同盟を結べば可能性があるものの、これに日本が加わらないと、技術面で欧米に対抗できません。

ドイツは東西統一で多くの負債を負ったように見えましたが、実は共産主義国ゆえに高い教育水準を持った労働者を確保することができました。そして、ソ連から離れた東欧各国も高い教育水準を持つ労働者が豊富に抱えており、その賃金は非常に低額でした。そこで、ドイツは部品工場をEU県外の東欧各国に移して安価な部品を製造し、ドイツに輸入した上で完成品として、関税なしでEU各国に輸出したのです。

ドイツの高品質で低価格の商品はEU市場を席巻し、フランス、スペイン、ギリシャなどは市場を奪われます。通常であればドイツ・マルクが高くなり、輸出にブレーキがかかるのですが、ユーロという共通通貨故に通貨切り上げが起こらず、輸出に歯止めがかからずドイツの一人勝ちとなりました。

こうして、ドイツは経済的に圧倒的な力を持ち、ドイツに従属する周辺国を抱えて、ドイツ帝国が再興されました。現在のギリシアの支援に対しても、ギリシアに緊縮財政を要求し、追加支援策に反対するのは、ドイツだけです。

しかし、最後はギリシアを支援すると思います。ギリシアがユーロから離脱しては、甘い汁が吸えなくなるからです。

今後、ドイツ帝国の更なる台頭と暴走が危険視されます。