2015年7月30日木曜日

690.「沈みゆく大国アメリカ」 堤 未果

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オバマケアにより、これまで医療保険に入れなかった低所得者が、保険に加入できるようになり、全てのアメリカ国民が安価に医療を受けることができる・・・

って、思ってました、この本を読むまでは。
全然、話が違うじゃないかって、私が思うよりも、オバマケアを応援していた人達が思ったことでしょう。

実際には、これまで企業保険で安価に医療を受けることが出来たいた人は、法改正や企業保険の解体で保険料の大幅な値上げ。
保険に加入できるようになった人でも、メディケアを受け入れる病院がほとんどはないために、遠い病院にいった挙句、長い順番待ち。
がん治療薬は自己負担だが、安楽死薬は保険適用で早く死ねと言われているようなもの。

これは、アメリカの政治が製薬会社や金融会社という一部の企業に実質支配されてしまったからです。
オバマケアの承認と引き換えに、薬価の決定権を放棄したため、薬価は製薬会社の言い値となりました。保険は国の運営でなく民間会社に任されたため、高額な薬は保険負担からはずされました。

その結果、オバマケアがスタートしたにもかかわらず、大きな怪我や病気をすると保険に入っていても高額な医療費に追われ、自己破産に追い込まれることになりました。

さらに、保険料負担を嫌った企業は、フルタイム社員を保険適用外のパートタイム社員に降格させたため、社員の非正規化が進みました。

日本も対岸の火事ではありません。混合診療解禁、株式会社病院、保険組織の民営化、診療報酬改革などは、アメリカ化の前段であり、着々と国民皆保険の切り売りが進んでいるそうです。世界的にも稀有な国民皆保険制度を守り抜き、次世代にも引き継ぎたいと思いました。