2015年9月28日月曜日

728.「英語の害毒」 永井 忠孝

最近の日本政府、企業、学校、そして個人の英語偏重へ警鐘を鳴らす本です。

日本人は英語を学習することで世界中で活躍できる人材になれると信じているが、英米人が自分達の言語を話せる奴隷を育成していると見方もあります。

いくら英語を勉強しても第二外国語として英語を学んだ人は英語で議論をする場合にはストレスを感じます。一方で英語が母国語である人はストレス無く思考出来る分、余裕を持って広く深く議論することができます。その時点で日本人が英語で議論した場合、勝ち目が薄いです。

では、幼い頃から英語教育を行えば、欧米人と対等に議論ができるという意見もあります。しかし、そうした場合、英語の発音がよくなり日常会話は上手になるものの、英語で問題を深く考えるというところまで到達できません。さらに悪い事に、英語教育に時間を割いた分、日本語でも問題を深く考えるということができなくなり、どちらの言語でも深く思考できない人間になってしまうとのことです。

実際、シンガポールはバイリンガル教育のモデルと見做されていますが、民族語も英語もどちらの言語でも読み書き能力の最低水準に達していないことが報告されているそうです。

日本では、実際に仕事で英語を使う人は、全体の2~3%程度との調査結果があります。そうすると、英語で仕事をしたい人や欧米人に雇われたい人は英語の学習をし、全ての生徒に英語教育をする必要はないと思います。

鄧小平はフランスで働いていたものの、中国語の方言しか話せませんでした。それでも、国を変える仕事を成し遂げています。日本語でしっかりと物事を考えて、翻訳者を交えたとしても、堂々と欧米人と議論の中身で勝負できる人材を育てた方が有益ではないでしょうか。