2015年11月9日月曜日

757.「沖縄の不都合な真実」 大久保 潤、 篠原 章

沖縄といえば、日本で一番米軍基地が多く、県民の殆どが基地が無くなることを望んでいるという印象がありました。しかし、本書を読んでその印象が一変しました。

沖縄では、県民が階層化されているそうです。頂点に教師、次に公務員といった富裕層がおり、その下にそれ以外の貧困層が置かれています。この富裕層は、米国によって作られた琉球大学OBによって占められており、その上下関係は普通の大学と異なって卒業後も続いています。

企業は建設業が中心で、非正規雇用者が全体の40%に上り、労働組合が育たなかったため、経営側の力が強く、労働者は不利な条件を飲まなくてはならない、という労働環境にあります。

この県民の社会構造を前提に、基地の反対運動が、教員と公務員中心に行われています。反対すれば、国が振興策を県に与え、それにより公務員が潤うからです。だから、基地闘争は無くならず、ずるずると長引きます。本当に沖縄から基地が無くなると、基地により支えられている地域産業が消滅し、振興策が無くなり、さらには反対運動の対象が無くなってしまうからです。

基地移転について、辺野古の住民全てが反対しているとも言えないようです。辺野古自体は過疎地なので、基地が来てくれたら潤うからです。そして、基地は全てキャンプ・シュワブの中に作られるので、新たに土地を収容されることはありません。現在もその地域は立ち入り禁止のため、海水客や漁民はいません。

どうやら、オール沖縄と言うのは選挙対策であり、その地域に実際に暮らしている人達の本心とも言えないようです。

本当の問題は、公務員を頂点としたピラミッド構造で、基地反対運動の振興策以外に産業が育っていないため、一般県民が貧困に留め置かれていることのようです。