2016年1月19日火曜日

827.「株式会社タイムカプセル社 十年前からやってきた使者」 喜多川 泰

経営していたIT企業が倒産し、無職となった英雄は妻子に逃げられ、仕事を探していました。

応募しても全く採用されない英雄は、やっとのことで、タイムカプセル社に採用されます。タイムカプセル社は、10年後の自分にあてた手紙を10年経った時に本人に届けるという非常に変わった事業をしていました。

英雄の最初の仕事は、2005年に瀬戸内海の小さな島の中学校で書かれた手紙のうち、郵送できなかった5通の手紙を本人に届けることでした。

中学生の頃に持っていた夢や希望は年を経るにつれ、挫折や失望に塗られていきます。そして、段々とそれに慣れてしまい、淀んだ生活が日常となってしまう。

そんな時に届く10年前の自分からの手紙は、あまりに眩しく、時には痛みさえも伴います。

しかし、他でもない、自分から期待や励ましが凍てついていた自分の気持ちを溶かし、また、人生をやり直そうとする希望の光となります。

喜多川さんの作品はどれも素晴らしいのですが、本作は最高傑作ではないかと思いました。