2016年3月25日金曜日

891.「戦略的インテリジェンス入門」 上田 篤盛

元防衛省情報分析官による情報分析官向けの教科書のような本です。

基本的な項目はあらかた押さえられています。説明が平易で分かりやすく、最近の外交情勢、特に中国との関係について例示されており、非常に興味深いです。

ただし、この分析法の有効性には確信が持てませんでした。それは、分析に用いられている情報は、問題発生から暫くたって分かった後付情報であり、情報が少ないなかでもこうした分析ができたか分からないからです。

また、これらの分析が、問題発生時に民主党政権で検討されたような形跡がないことです。著者自身は当時政権とは無関係であったかもしれませんが、こういったインテリジェンス分析の手法は政権周辺にもあってしかるべきはず。

しかし、体当たりした船の船長を解放し、ビデオは公開しないと約束してしまい、公開した人間を組織に居たたまれない状況に追いやってしまった。

こういったことから、せっかくの戦略的インテリジェンスは活用されず、机上の空論になっているのではないかと懸念が生じました。