2016年3月30日水曜日

894.「ここは退屈迎えに来て」 山内 マリコ

寂れていく地方都市での若者たちの物語。

高校を卒業し、皆、生まれ育った地方都市を離れて散り散りになります。数年達、都会の生活に馴染めず、生まれ育った町に帰ってくると、そこは自分が高校時代を過ごした町より数段うらぶれた、面白みのない町となっていました。

町に残った男は早々に結婚し、女は子供を産んで、すっかり老けこんでいます。しかし、出戻りにとっては、付き合う相手もなく、親に寄生し惰性で生きていく日々。

学生の頃、クラスには、椎名といる人気者の男の子がいました。スポーツ万能で話も面白く、いつも皆の中心でした。そんな椎名と、椎名に憧れ、思いを寄せていた同級生たちとの邂逅。

あの頃輝いていた椎名と、輝きを失った椎名を思うことで、自分自身の過去、現在を振り返り理解していきます。

そして、学生時代の人気など卒業してしまえば色あせてしまい、そこから学生時代よりも長い、自立力が求められる人生が続いていく。そのことに気づいたときに本当の自分の人生が始まるような気がしました。