2013年10月21日月曜日

151.「現代中国の父鄧小平(上)」 エズラ・F・ヴォーゲル

上巻だけで576ページもある大著。
しかも、文字がびっしり書かれているので、普通のノン・フィクションの本の
3冊分、上下巻合わせて6冊分はボリュームがあります。
著者は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」のエズラ・F・ヴォーゲル。
内容は、CIAの事前チェック済みなので信憑性が高いです。

右耳が聞こえず、外国語は話せず、高等教育も受けていない小柄な中国人が
3度の失脚と生命の危機に脅かされながらも、いかにして中国を
GDP世界第2位の国に創り変えていったかの物語。

前半は、毛沢東との愛憎劇。
国民党との内戦に勝利し、共産主義国家を創った毛沢東は
革命家であり思想家であり、神でありました。
しかし、建国後の政治組織整備、経済施策、教育制度には無策でした。
そして、この問題を解決できる方策と実行力を持つ人間は、
鄧小平しかいませんでした。
だが、毛沢東とその支持を受けた四人組は、イデオロギー闘争に明け暮れ、
「大躍進」や「文化大革命」によって多大な犠牲者を生み出し、
鄧小平を3度も失脚させ、中国の近代化を遅らせてしまいました。
鄧小平が国政のトップに立ったは、毛沢東の死後の1977年で、
彼は72歳になっていました。

後半は、鄧小平がトップに立ってからの工業、農業、国防、科学といった
「4つの現代化」による中国の近代化。
これまでの私の理解では、「中国対米国」という構図しかなかったが、
実際にはそれよりも、「中国対ソ連+ベトナム」という対立を
中国が懸念していたことを知りました。
日中平和条約が締結できたのは、2国間の関係が改善されたため
と思っていたが、中国側から見れば、ソ連に対する牽制の意味が
大きかったようです。

尖閣諸島に関して、
「この問題はわれわれの世代よりも賢い次に世代に解決を委ねるべきだ。」
と鄧小平が答えたのが1978年10月25日。
それから、35年後の2013年には、この問題は悪化しているように思えます。
鄧小平が期待した「次の世代」が現れるのは、まだ先のことかもしれません。