2013年11月5日火曜日

162.「高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか: 若者たちが今〈大人になる〉とは」乾 彰夫

「18歳の今を生きぬく―高卒1年目の選択」東京都立大学「高卒者の進路動向に関する調査」の続編。

成績中位校のA高校と低位校のB高校の卒業生を卒業後5年間を追ったレポートです。

とても驚いたのは、調査対象者の女性の性的サービス労働での就業が多いことです。それも、A高校ではゼロだったが、B高校では7割に登っています。

その経緯は、就職後1年以内に離職して失業後、
正規雇用で就職できないまま非正規雇用の職を転々とし、5年以内に10回以上の転職を繰り返します。性的サービス労働への従事は、離転職のプロセスの一部で就業目的の第1位は、収入だそうです。

つまり、低位校を卒業した、普通の女の子が高校卒業後の最初の就職につまずくと、その後の再就職に苦しみ、経済的理由から性的サービス労働へ落ちていくという構図です。

また、私自身の周囲の状況から得心がいったのは、現時点では、中国語学習があまり就職に効果が無いことです。20年程前から、「これからは中国語の時代だ」と言われてきたが、2013年時点で、日本企業への就職にプラスに働いていないようです。

中国は、GNP世界第2位の経済大国になりましたが、その内実は、技術やマネジメントは欧米の後追いで、未だ中国発の技術が主流となっていません。
そのため、一般的な中国国民の収入は低く、英語や日本語を学んで、外資企業に就職したいという中国人が多いとのことです。

そのため、日本人が中国企業に採用される条件は中国語よりも技術力が重視されます。日本人が日本企業の現地法人で採用される場合は、現地待遇のため、収入が現地レベルと低額に抑えられます。
その一方、日本人が日本国内で採用される場合は、中国とのビジネスは殆ど英語でおこなわれるため、中国語を活かす仕事は、通訳や翻訳の会社くらいにしかありません。

そうしますと、中国語でビジネスするには、中国が現在の発展を続けたうえで、あと10年以上はかかりそうです。したがって、中国語学習が就職に効果を発揮するのは、まだまだ先と思われます。

結局、本書を読んで感じたのは、若者が安定して就業するためには、大学の上位校か、需要が多い資格が取れる専門学校に進学することが必要です。この観点では、日本の学歴社会はまだまだ継続していると言えるでしょう。

その他には、収入の多少を問わず、自分の好きな分野で起業するこという選択もあります。この観点では、食べていけるようになるまでにはフリータという
就業形態になるでしょうが、うまくいった場合には、一本軸が入った働き方になります。

それ以外には、企業に搾取され翻弄される働き方を
余儀なくされるかもしれないと感じました。