2014年1月8日水曜日

215.「お前たちの中に鬼がいる」 梅原 涼

架空の世界と現実の世界が存在し、架空の世界は個人の妄想ではなく、6人が共有している。
6人のうち5人は牢獄に繋がれ、1人だけが牢獄の鍵を持ち、自由に動き回れる。その中でヒントを探し、協力者を選んでそのゲーム空間から脱出するというのが主な筋。

架空の空間が存在する理由などは、全く明かされませんが、あまり違和感を持たないで楽しめました。6人が過去のトラウマと向き合い、それを乗り越えるというメインテーマと、トラウマによって引き起こされた哀しい愛の形が心に残ります。

本書はもともと、Amazonの電子書籍として個人出版されたものですが、非常に評判がよく、出版社から書籍化されました。筆者は他に仕事を持っているそうですが、これが初めての書籍とは思えないほどよくできています。
こうした電子書籍での個人出版により世に出るという形式は、これまで世に出る機会がなかった才能ある人に道を開く新しい機会となるものです。

紙版用に1995年のストーリーが書き起こされていますが、それが2013年のストーリーに希望を与える形で終わっているのがにくい構成でした。