2014年2月23日日曜日

261.「反・自由貿易論」中野 剛志

米豪FTAの教訓は、自由貿易協定は国同士の合意に基づくものです。
しかし、「一方の国が圧倒的に有利になる」という結果を引き起こすことが多いということです。


経済を復興させる効果的な政策は、保護主義・産業政策であり、英国、米国、ドイツもこれにより経済成長しました。自由貿易に移るのは、産業が競争力を持ってからです。

米国が入っている貿易協定に日本が参加した場合、不利益があっても日本は憲法98条2項で国内法よりも貿易協定を守る義務を負うのに対し、米国は国内法を優先して貿易協定の規定に違反することができる国内法を作ることができます。

労働基準、安全基準、環境規制、投資規制、知的財産制度、政府調達制度など、伝統的に各国が国内法によって自律的に決めてきた制度やルールについて「非関税障壁」などといって撤廃したり、改変したりすることは止めて、各国の経済的な国民主権を認めるべきです。

結局、アメリカが参加するTPPを含む多くのFTAはアメリカの一部の利益享受者による世界戦略です。交渉に長けたうえに、不利な規制は実行しないためにアメリカだけが得をする構造になっています。TPPで大きな不利益を被った場合、日本では誰がその責任を負うのでしょうか。