2014年7月16日水曜日

409.「私の男」 桜庭 一樹

養父淳悟と禁断の関係にある花の結婚から、過去に遡り、その濃密な関係に至る経緯と、それに纏わる2つの殺人が描かれていきます。

現在から過去に話が遡っていきますが、これが読みてに複雑な感情を与えます。後の事件を知った上で過去のやり取りを読むからです。

2人が暮らした北海道の紋別の淀んでいるが濃厚な空気と、東京の華やかだが軽薄な情景が対比されます。

心情描写がとても細やかで、複雑で深いです。こういう文体は日本文学独特で、外国の小説ではあまり見られないのではないでしょうか。読み手の心にまとわりつくようです。