2014年9月1日月曜日

456.「怒り(上)」 吉田 修一

八王子郊外で夫婦が惨殺される。惨殺現場には、「怒」の血文字が残された。目撃された容疑者山神一也は、姿を消し、1年が経過する。

ソープランドから保護され房総の漁港で暮らす愛子の前に田代が現われ、大手企業に勤めるゲイの優馬は新宿の発展場で直人と出会い、不倫した母と沖縄の離島へ夜逃げ女子高生の泉は、田中と知り合う。

それぞれに前歴不詳の3人の男…。

そして、山神は、整形手術を受け顔を変えたことが判明する。行方が分からない山神は、田代、直人、田中のいずれかなのか・・・。

直接的には本筋に関係ない出来事に思えることが描かれていますが、それが物語に厚みを与えています。

3つの場所での出来事が同時に進行し、その全ての登場人物を自在に動かすことは至難の業です。作者の力量が分かります。

この3つの話がどのように絡んでいくのか、下巻が楽しみです。