2014年9月2日火曜日

457.「怒り(下)」 吉田 修一

田代を疑ったことで愛子は田代を失います。疑惑の発端を作った父は、その後悔の慟哭をどんな気持ちで聞いたのでしょうか。

優馬は警察からの電話で、直人を「知らない」と答えました。殺人事件に巻き込まれることや、自分がゲイであることが周囲に知られることを恐れたためでした。まるで、イエスを3度「知らない」と言った、ペテロのようです。

単なるミステリーではなっく、一つの殺人事件を中心に描いた人間ドラマです。過去が分からない田代、直人、田中と関わることで、愛子、優馬、泉の人生が狂い始めます。

愛していた人を疑い、裏切ることで、自分が最も傷つき、大切なものを失ってしまう・・・ そういうことを考えさせられる物語でした。