2014年10月8日水曜日

492.「往復書簡」 湊 かなえ

手紙という古風な媒体によって生まれる独特の情感を活かして作られたミステリー小説です。

しらゆき姫殺人事件では、SNSといった即効性のメディアでリアルタイム感を出していました。本作では、携帯電話やメールといった迅速だが無機質な情報伝達ではなく手紙の匿名性やタイムラグを活かして、過去の事件を振り返っているという形式を取っています。

100ページ程度の中編3作と10ページ程度の短編1作からなります。2作目の「二十年後の宿題」は、吉永小百合さん主演で「北のカナリアたち」の原作として映画化されました。

小学校教師を退任した竹沢は、かつての教え子大場に、20年前に竹沢が担任していた6人の教え子の消息を調べるよう依頼します。

6人は、4年生の時に竹沢とその夫と共にピクニックに行きます。そして、1人が川に落ち、助けようとした竹沢の夫が命を落とします。

この事件を6人の子供達は、どのように見ていたのか。
連絡がつかない最後の1人はどうしているのか。
なぜ竹沢は、大場に依頼したのか。

これらの謎が子供たちの証言により、全て明かされたとき、竹沢の深い想いに感動を覚えました。