2014年10月10日金曜日

494.「王国」 中村 文則

富む者が富み続け、持っている者が持ち続ける構図、それが「王国」。王国を維持するために情報操作でこの体制を管理している組織が存在している。

鹿島ユリカは、娼婦を装い、社会的要人に近づいて、共に裸で戯れる写真のような、性の恥を覚える証拠を取ることを生業としている。

ある日、いつものように指示された部屋へ行くと、男が既に死んでいた。ユリカは、事件の背後にいると目される男、木島からあるものを取ってくるよう、矢田から指示を受けるのだが・・・

著者の作品には、孤児院育ちの主人公が多いが、ユリカもその一人。ただ、ユリカは、絶望に浸かり、破滅に惹かれることなく、最後まで生き延びようとする強い生存意欲に溢れているという点で、頼もしく読めました。