2014年12月18日木曜日

544.「スタート!」 中山 七里

中山七里さんの小説は、重苦しく、いくつものどんでん返しがある殺人事件に魅力があります。

本作は、映画製作に情熱を傾ける人間ドラマだと思っていたので、新しい分野を探るそれなりの作品と、正直、あまり期待していませんでした。そこそこは楽しめるだろうけど、夢中にはなれないだろうという予想です。

しかし、その予想は、完全に裏切られました。素晴らしい作品です。映画製作の舞台裏を見せながらも、善人の隠された悪意を基軸のテーマにしています。

映画に情熱を傾ける若者達の成長を描きながら、殺人事件の謎解きも同時進行させています。その中で、昭和の職人達から、平成の若者達へ、映画に向き合う覚悟が伝達されていきます。

作中の映画原作「災厄の季節」が、著者の「連続殺人鬼 カエル男」であるところも面白いです。この作品も傑作なので、ご一読をお薦めします。




最後まで、どんでん返しが続き、最後の最後に「芸術を愛する者の悪意」が姿を現します。一気に読みきれる作品でした。