しかし、本作は、結衣子ひとりの独白からなり、状況の描写もこれまでより細かく、しつこいぐらいに書き重ねています。
一人称であるがゆえの情報不足と、一方的な視点による思い込みが謎の鍵となっているようです。著者の新たな試みでしょうか。
小学校3年生の姉の失踪についても謎が語られますが、同時に現在の姉の話が織り込まれるため、あまり緊迫感がありません。謎解き自体もあまり複雑でも意外でもありません。
しかし、文章の構成や、母親の狂気、周囲の子供たちの対応、結衣子の心の動きに引き込まれて最後まで一気に読み進めました。