2015年1月16日金曜日

558.「豆の上で眠る」 湊 かなえ

著者は、複数の人の独白により、事件を様々な視点から描く文体に特徴があると思っていました。

しかし、本作は、結衣子ひとりの独白からなり、状況の描写もこれまでより細かく、しつこいぐらいに書き重ねています。

一人称であるがゆえの情報不足と、一方的な視点による思い込みが謎の鍵となっているようです。著者の新たな試みでしょうか。

小学校3年生の姉の失踪についても謎が語られますが、同時に現在の姉の話が織り込まれるため、あまり緊迫感がありません。謎解き自体もあまり複雑でも意外でもありません。

しかし、文章の構成や、母親の狂気、周囲の子供たちの対応、結衣子の心の動きに引き込まれて最後まで一気に読み進めました。