2015年1月30日金曜日

568.「今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略」佐藤可士和

ブランドを創るということについての教科書のような本です。


実際にブランド造りに携わった人たちが、何に悩み、何をしたのかがわかり、大学教授による後付けの理屈より、余程勉強になります。

そして、ブランドが構築された結果、どのような事象が起こったのかを実感させてくれます。

ブランドを創るということは、非常に難しいです。それを成し遂げることができたのは、著者の経験と感性によるところが大きいと思います。

しかし、それを可能にしたのは、今治で培われたタオル作りの技術と、そこから生み出された品質です。何もないところからは、いくら著者が有能でもブランド創りは不可能です。著者が気づかせてくれたダイヤの原石がそこにあったのです。

また、国の補助金も結構、役に立つのだということを知りました。ダイヤの原石を磨き上げるには、多額のお金がかかるからです。
これだけの規模のプロジェクトを実行するには補助金が不可欠であったと感じます。これがなければ、著者のプランも絵に描いた餅に終わったかもしれません。

タオルについては、セーフガードが発動しなかったものの、かえって覚悟と基礎体力が生まれたのかもしれません。輸入制限により自動車産業が結果として衰退してしまった米国と対照的です。

グローバリズムによって、価格競争に陥り、衰退していく産業が日本にはまだまだ多くあります。品質を上げて、高価格にすれば復活できるという人もいますが、そういう人は具体策を掲げません。言うとすれば、効率化を図り、価格競争力を高めるということですが、それは更なる価格競争を引き起こします。

技術や効率化だけに頼らず、ブランド創りにより業績を回復させた今治タオルの成功は、他の産業の範になるものと思いました。