2015年6月29日月曜日

668.「鏡の花」 道尾 秀介

6つの短編からなります。一編目、二編目を読んで同じ苗字の人が出てくるものの、あまりひねりのない、純文学っぽい小説だなと思い、三編目を読むことをためらいました。

少し無理して三編目を読むと、「おやっ」と思いました。一編目と二編目と同じ登場人物が出てくるのですが、違う点は、死んでいた人が生きていることです。

全編を通じて同じ登場人物が出てくるのですが、それぞれで違う人が死んでいて、それによって運命が変わり、全く違う話が展開していきます。そうして、ある話では、違う話で死んでいた人が生きていて、その人が死んでいたらと願うのですが、死んでいた話では死なせたことを非常に後悔しているという、2つの異なった心理状況を味わうことができます。

パラレルワールドを体感できる、よく出来た話で面白かったです。