2015年7月1日水曜日

670.「帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い」 朴 裕河



韓国人の大学教授による慰安婦問題の研究書です。著者は、日本政府に人道的責任があるとしながらも、多くの資料に基づいた事実により、客観的な分析をしています。この一冊で慰安婦問題に関する様々な見解や資料を知ることができます。


本書を読んで、慰安婦問題は解決しないと思いました。なぜなら、慰安婦問題は韓国内で政治目的化してしまったからです。

日本国に対する法的責任を追求することで、当選した議員が増えてきており、挺対協も政治力を強めています。そして、最高裁判所が日本政府に法的責任を求める努力をしない韓国政府を憲法違反と判断しました。

更に、その主張を根拠とした小説やドラマが人気を博し、事実として国民に浸透しています。国民の人気を得るためには、その内容を超える過激な描写が求められ、さらに拍車がかかってしまいます。

どんどん乖離していく日本と韓国の主張ですが、お互いに事実を基に解決することは非常に困難だと思います。解決できるとすれば、日本政府が韓国側の主張を丸呑みして、謝罪し補償することです。そうした場合、日本はナチスのホロコーストに匹敵する人身売買、性奴隷といった、事実と異なる濡衣を認め、歴史に汚名を残すこととなります。

慰安婦問題は、朝鮮民族だけに対するものではなく、当時日本人だった朝鮮女性を含む日本女性に対する問題です。強制連行は日本政府が関与していたのではなく、日本人に扮した朝鮮人業者に拐かされたのが事実のようです。そして、奴隷としていたのではなく、対価を払っていたものの業者に殆どを搾取されていたのです。

慰安婦問題については、解決することは殆ど不可能と思いました。事実に反することに対しては、淡々と説明するのみで、無理に解決を図ろうとしなくてもよいのではと思いました。