2015年8月11日火曜日

698.「後妻業」黒川 博行

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なかなか奇抜で独創的なタイトルだと思いましたが、実は実際の事件でも使われることがある用語のようです。

後妻業とは、資産家の老人に近づき、結婚や公正証書遺言を手に入れた後、老人を殺害し遺産を手に入れる生業のことです。

本書は、結婚相談所経営の柏木が69歳で醜女の小夜子と組んで老人を次々と喰い物にしていく様が描かれています。

老人の資産を狙うので保険金を狙いません。保険金が絡まないため、何人も不審死を遂げても警察が介入しないのです。

小夜子は醜女の老女ですが老人たちは次々と毒牙にかかっていきます。老女であっても老人たちからすれば年下であり、醜女であっても性行為をしてくれると騙されてしまうのです。

それは、老人たちが孤独で性に飢えており、お金を子供に残すより使ってしまおうという心理状態が背景にあります。

教師という安定した職業を全うして資産を得たが、それゆえに殺されてしまう耕造と、警官という安定した職業を辞め、低所得の探偵としてお金に追われる本多の姿が対照的です。
本書は詐欺事件の話と共に、世代間格差やお金に振り回される人間の姿も描かれていて、深く考えさせられました。