2015年8月12日水曜日

699.「水やりはいつも深夜だけど」 窪 美澄

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6つの短編小説からなります。相互に関連性はありません。大きな事件も謎もなく、ごく普通の家庭生活や近所づきあいが描かれています。

しかし、主人公の生まれ育った環境や置かれた状況によって、心理的に追い詰められていく様がリアルすぎて怖いです。

登場人物の誰も悪気はないのですが、常に周囲の評判や要求などを気にすることで追い詰められ、息苦しくなっていきます。

相手から向けられた不満に対する主人公の反論に「そうだよね。そうなってしまうのは、わかるよ。」と共感しつつ、自分がその立場に置かれても」」打つ手がありません。自分がその状況に置かれても主人公と同じようになるだろうし、実は既に自分も気づかないうちに同じ立場に置かれているのかもしれません。

著者の作品から受ける、いつもの衝撃はありませんが、これはこれでよいと思いました。

いろいろなタイプの家族が描かれ、自分の状況とは異なりますが、すべての作品に共感でき、感情移入できました。

羨ましく見える家庭が、実は離婚寸前や子供の障害で苦しんでおり、不幸せに見えた家庭が、実は心豊かで仲良く協力していたりと、幸せって何だろうなと考えさせられる作品でした。