2015年10月7日水曜日

735.「日英同盟 同盟の選択と国家の盛衰」 平間 洋一

日露戦争に勝った日本は、白人に支配される国々の希望の星となりました。一方で白人優位の世界秩序を望む国々にとっては、秩序を破壊する脅威となりました。

アメリカは、東アジアの植民地化に出遅れ、唯一、フィリピンを支配するのみでした。日本に独占された中国の権益を狙うアメリカにとって、日英同盟が最大の障壁となっていました。

コミンテルンは、中国の共産化を図っていましたが、ソビエトが世界最強の海軍を持つ日本に直接対峙するには危険が大きすぎました。そこでアメリカを使い、日本を殲滅する計画を立てました。

この計略により、日英同盟は消滅させられ、日本はドイツと組むより他がなくなりました。イギリスと組んでいたときは海軍の力が強く海洋国家的思考を持っていたのですが、ドイツと組むことで陸軍の力が強くなり侵略思考の大陸的思考となっていきます。

そうして、日本はコミンテルンの謀略に嵌められ、中国大陸への泥沼の戦闘に巻き込まれ、さらにはアメリカに宣戦布告をすることで破滅への道を進むこととなってしまいました。

福沢諭吉は「時事小言通俗外交編」で、
「そもそも、外国との交際は相互に権利を主張するものにして、情を持って相接するに非ず。・・・情に依頼すべからず。
然らば即ち何を持って之に接せんか。情の反対は力なり。外交交渉の大体は腕力に在り」と述べています。

「国際政治の現実は「力が正義」なのである。国際政治に正義はなく、あるのは国益であり、それを守り得るのは軍事力である」という著者の主張が、現実的な実状なのだろうと思いました。