2015年10月13日火曜日

738.「機龍警察 未亡旅団 」 月村了衛

チェチェン紛争で家族を失い、陵辱と生命の危険に常に晒される女性たちが自衛のために集まります。

女性たちは生き残るために武装化し、他の派閥と提携するために危険な案件を引き受けるうちに、凶悪化して「黒い未亡人」と恐れられる最恐のテロ集団となっていきます。

そのテロ集団が日本に潜伏して大規模テロを計画していることが発覚しますが、その目標と狙いが明らかになったとき、警察に衝撃が走ります。

このシリーズは、各国の戦地の歴史や状況から書き起こされるため、非常に勉強になる反面、最初の100ページ位までは読むのに努力を要します。しかし、そこを抜けると事件の全体像も掴めて、読む速度が上がります。

各巻、一人の人物がその生まれから現在に至るまでの生き様やトラウマがクローズアップされます。今回は、特捜の由起谷が「白鬼」と呼ばれるようになった経緯です。それにしても、よく登場人物のプロフィールをこれだけ作れるなと感心します。

チェチェン紛争について全く知識がないので、勉強になると同時に恐ろしさを感じました。人間の絶望や裏切り、そして、希望が見いだせた作品です。