2015年10月27日火曜日

749.「ある日突然40億円の借金を背負う――それでも人生はなんとかなる。」 湯澤 剛

著者は、父親が急死したため、事業継承することとなりますが、その事業は40億円もの負債を抱えていました。読む前は、40億円の負債は相続せずに会社を整理してしまえばよいのにと思いました。しかし、著者もそう思っていたものの、そこで働いていた人や取引先、金融機関からの圧力により引き継がざるを得なかったようです。

著者はそのために、キリンビールを退職します。自分が抜けたら立ち行かなくなると思っていた仕事が、引き継ぎなしで後輩がうまく担当するのを見て自分の無力感を感じます。私も、大企業では仕事が組織化されているので実は誰がやっても変わらないということに虚しさを感じました。

そして、事業の立て直しに紛争しますが、大企業の様々な研修や、格好のよい海外出張、MBAで学んだことが中小企業の経営ではほとんど役に立ちませんでした。それらも、安定した大企業の中だけの箔付けに過ぎないのですね。

中小企業の生々しい現実がよく伝わります。特に大手銀行の横柄さなど、フィクションのはずの「半沢直樹」そのままでした。一方で、よく言われますが、地域金融機関は本当にやさしく頼りになりました。そして、大手企業で学んだことで唯一、役だったことが「事業計画書の作成」でした。これは勉強になりました。

著者は、最悪の事態の「破産計画」を紙に書きだしたことで、精神的安定を得ます。そして、自社の弱みを修正しようとしたことから業績を落としたため、強みに集中して弱みを放っておきました。これでターゲットが明確になり、業績が回復し始めるのです。

最後まで、一気に読みました。著者は40億円の借金を返済する中で大企業では決して学べないものを得て、人間として激しく成長したものと思いました。