2015年11月19日木曜日

766.「馬の首風雲録」 筒井 康隆

戦争をテーマにしたSF小説です。

馬の首暗黒星雲にビシュバリクという惑星があり、犬に似たサ・チャビ族が住んでいました。西暦2321年にコウン・ピ(地球人)と通商協定が結ばれビシュバリクに科学技術が流入して急激に発展します。そして、サ・チャビ族は惑星ブシュバリクを発見して、大規模の植民が行われました。そして、コウン・ピは、ビシュバリクとブシュバリクに武器を供与したことにより、両惑星間で同一種による戦争が始まりました。

ジョージ・オーウェルの動物農場に似た寓話です。動物農場は、人間を追い出した農場で動物たちが共産主義社会を建設しようとしますが、やがて支配者と非支配者が生まれ、結局、人間の代わりに豚に支配される皮肉を描いたものです。

本書は、人間から武器を与えられた犬同士が戦争を始めます。戦争で上手く立ちまわって一儲けしようとして「戦争婆さん」の4人の息子が戦争にされ、波乱の人生を送るという話です。

誰の心にも戦争を欲する気持ちがあり、戦争を格好よいものと思う気持ちもある。しかし戦争は容赦なく、略奪、強姦、殺戮を行い、関わる人全てを不幸にするというメッセージを感じました。