2016年1月16日土曜日

824.「透明カメレオン」 道尾 秀介

ラジオパーソナリティの恭太郎は、とても魅力的な声を持っていますが、外見がかなり残念で、いつもファンの期待を裏切っています。

女性にも縁がなく、30代半ばにして童貞です。仕事帰りにいつも行きつけのバー「if」に立ち寄り、その後、牛丼を食べる毎日。ifには常連以外の客がいませんが、いつも明るい笑いに包まれています。

そんなある雨の日、全身ずぶ濡れになった女性がifに入ってきて、「コースター」とつぶやくところから事件が始まります。

同じ著者の「カラスの親指」のような軽いタッチのコンゲームを予想していましたが、まさかのどんでん返しでした。

数々の伏線が貼られ、ストーリーが二転三転します。何度もピンチをifの常連の結束で切り抜けるのですが、なぜ、単なる常連がこんなに団結するのか?

そして、最後の最後にどんでん返しがあり、それまで見えていた物語の風景が一変します。

ヘタレの恭太郎が見せた、人間としての本当の強さ、優しさ、温かさが心に残りました。