2016年3月7日月曜日

875.「アズミ・ハルコは行方不明」 山内 マリコ

舞台は名もなき地方都市。工場は撤退し、商店街はシャッター通りとなり、大きな施設といえば、イオン位。町中の交通手段といえば車か自転車。都会に出るとなるとどうやら名古屋らしい。

そこで生活する、愛菜、ユキオ、学は高校の同級生。皆、正社員の仕事を得ておらず、自宅に住んでバイトなど小遣いを稼ぐ。将来に夢はなく、その日その日を刹那的に生きている。

学はユキオから見せられたDVDに強い刺激を受け、2人でストリートアートを始める。グラフィティのテーマとして選んだのは、3ヶ月前に失踪した「安曇晴子」の似顔絵。

このグラフィティが評判となり、事態は意外な展開に・・・

デフレ化で停滞している地方都市に暮らす、若者の生態や倦怠感がよく描かれています。特に、学歴や職歴もない女性が地方都市でどうやって生きていくのか。学生時代は可愛らしさでうまく渡ってきた人生を、年を経たことで可愛らしさを失った後にどう渡って行くのか、考えさせる作品です。