2016年6月24日金曜日

952.「アカガミ」 窪美澄

「番う」という漢字が読めませんでした。「つがう」と読むのですね。勉強になりました。

1ページにびっしり文字が詰まっているのに、なぜか読みやすく、抵抗なくどんどん読み進められます。

著者の多くの作品は、現代を舞台として性欲が強い女性の欲望が一つのポイントと感じましたが、
本作は、未来を舞台として性欲が弱い女性の生殖がポイントです。

若者が「番う」ことも「まぐわう」ことも関心を失った未来。
政府が設けた制度「アカガミ」に応募すれば、相性がよい異性と同居し、親族を含めた生活全般が保証されます。

ミツキはアカガミでサツキを紹介され、お互いを恐れながらも徐々に相手に惹かれていきます。

何もかも恵まれた環境なのですが、生活空間は隔離され、体調が細かくチェックされます。その情況は、ある種、絶滅危惧種「トキ」の繁殖にようにも思えます。

「アカガミ」に隠された本当の目的とは・・・

少子高齢化社会をデフォルメしていますが、長生きするほどボケていく老人と、清潔さを極めるほど減少していく生々しい性行為の問題点を浮き彫りにした、著者の新しい試みです。