2017年1月18日水曜日

1081.「猿の見る夢」 桐野 夏生

薄井は59歳の銀行員。部下であった美優樹と10年来の不倫関係にあります。

中堅アパレルメーカーに経理部長として出向したところ、その会社が急成長して上場し、一転して大企業の取締役となります。

しかし、銀行へのコンプレックス、長男との二世帯住宅、次男の引きこもり、認知症の母の遺産相続、常務への野心と悩みはつきません。

そんな時、会長から、社長のセクハラ事件の相談を受け対応を迫られます。そして、家には、よく当たる夢を見るという中年女性、長峰が入り込んできます。

それまで、均衡を保っていた家庭と職場に徐々に亀裂が入り始め・・・

中年男の性欲、金銭欲、自己保身を描いた小説です。はたから見れば、薄井は非常に恵まれた環境にあり、仕事や親孝行に精を出せば、裕福な生活を送れたはずです。

しかし、性欲にのめり込み、仕事もそれなりで、老後のお金ばかりに腐心した結果、その生活を崩してしまいます。

客観的に見れば分かりきった罠ですが、当人は嵌ってしまう隘路なのです。男って所詮この程度のものなのです。